2章~北緯5度の絶対死守戦線~
第12話 作戦会議
7月5日 20:33
「キーニャケティ国防大臣…!」
首都から帰ると基地正門にはキーニャケティ国防大臣が1人護衛をつけて待っていた。
「ついてきてもらえるか?」
ラニーニャが驚いた事に構わず言葉を放った。
大臣直々にお出迎えと言うことなので何か重要な事が有るのだろうと思い、一行は大臣の後を静かに辿った。
数分歩いていると大臣は作戦会議室へと私たちを連れてきた。
大学の教室のような、一体型の机が5列並んでいた。
「好きなところに座るといい」
大臣がそういうので部屋の入口から見て右前側にラニーニャと弥島が、その左後方にその他が座っていた。
そして大臣は作戦会議室前方の壇上に後ろに両手を回してこちらに向くと、一度全員の顔を確認してから話し始めた。
「つい先ほどの事だ。
そういうと大臣の後ろで真っ白なプロジェクタースクリーンが下され、部屋中央の天井にあろうと思われる本体から光を放ちカメルーン沿岸部の航空写真が表示された。
「これは...ひどいな」
そう発したのはグラドファリドだった。
写りが悪いという意味ではなく、現在のカメルーンの土地がひどいのだ。
高画質のカラー写真だからこそ分かることだが、大量の穴が写っている。
おそらく敵航空機群による地上制圧時に爆弾が使用されたのだろう。
カメルーンにもCB-L防衛のためにRAから装備をもらった少数のアルジェリア陸軍が駐屯していたはずだが...
ここでディビレットが「カメルーンに駐屯していたアルジェリア軍の痕跡が見当たらないのですが?」と質問した。
大臣は躊躇いなく答える。
「アルジェリア軍はこちらの指示で撤退してもらっている。代わりに近隣のCB-L防衛隊の一部を向かわせている所だ。それとアルジェリア本国から幾らか戦闘機を出撃させ、エジプトからは先月チャド南部に完成した航空基地を経由してカメルーンの防衛に着いてもらうように現在進行形で取り合っている。」
長々と話終えるとすぐラニーニャの方に顔を向けた。
「そして重要なのはここで1度食い止める事だけではない事だ。味方偵察部隊の情報によると海からは超弩級戦艦級が3隻・軽巡洋艦級6隻・中型上陸艇30隻だ。CB-Lより南の空からはSU-27型を積んだ空中母艦ウェルヘルム型が3機確認されている。現状敵陸軍部隊の進行は確認されていないため、海と空の2つに集中してもらいたい。」
「…それでも両方だとキツくないッスか?」
グスコーニュは少しだけ苦手なものを見た時のような顔をしていた。
現在進行形で一部のCB-L防衛隊やアルジェリア空軍とエジプト空軍の機体が向かっているとはいえ、敵軍に対して圧倒的に戦力が少ない。
「前回のようなデコイが無いとは言いきれないのでは?」
ディビレットはグスコーニュに続いて質問する。
大臣は即答する。
「そうだとも。これだと戦力が足りずに撤退する事になることは既に理解しているつもりだ。だからこそ、我が国で最も強力な
「それは何でしょう?」と弥島が聞く。
大臣は言った。
「君たち中隊の実力は良く知っている。しかし補給もなければただの鉄屑と化すだけだ。その鉄屑を永遠に飛ばしたいとは思った事はないか?」
大臣は皆に聞いた。
数秒沈黙が続いたが、1人ハッとした顔をしたものがいた。
そう、ラニーニャ少尉だった。
そして思い当たった言葉を発した。
「空母打撃群…か」
大臣はラニーニャが言った後静かに首を縦に振った。
「あれらは直ぐには来れないでしょう。カメルーンに1番近い場所を航行している空母打撃群なんている訳が…」
隣に腕を組んで座っていた弥島も腕を組み直し言った。
しかし大臣はまた即答した。
「いや、先月から大西洋を中心に活動している艦隊が1つだけ存在する。変えてもらえるか!」
変えてもらえるかと大臣が少し声を大きくして言うと護衛がプロジェクターを操作して大西洋と空母打撃群の写真を映した。
「左には大西洋、右には先月から任務を任されている空母打撃群、その旗艦となる空母の写真だ。」
空母の写真の右下には艦名が書かれていた。
「今回助力に来てくれるのは"第4空母打撃群"の"セイニャール"だ。」
第4空母打撃群旗艦、セイニャール。
現在インド洋を巡回している第1空母打撃群旗艦ケルメシウスの4番艦である。
ケルメシウス型空母は旧世界における原子力空母に比べて2回り程大きく、搭載できる航空機の数も多い。
カタパルト蒸気式となっており艦首に向けて4本ある。
これほどの性能でも充分なはずだが、この型の空母の特徴はこれらだけでは無い。
1つは装甲だ。
旧世界の第二次世界大戦やその後に作られた原子力空母などを見てみると素の防護性能は非常に脆弱と言える。
機械的・人為的なダメージコントロールを以てしても対応できない状況もあるだろう。
だがこの空母は違う。
一番艦から三番艦までは前述した機械的・人為的なダメージコントロールをするようになっているが、四番艦のセイニャールにはこの時代にはそぐわない”人工知能”が搭載されている。
人工知能が艦内に無数に設置されている高感度センサーから被害状況を瞬時に算出する。
例えば艦首に敵魚雷が命中するとほとんど場合は浸水被害が発生するはずだ。
浸水が発生したとき、人工知能は艦首の異常を検出、状況を把握。人工知能と連携された油圧式の隔壁は瞬時に当該区画を閉鎖し、自動的に排水が開始される。
しかし排水では不可能と人工知能が判断した場合は同様に隔壁を封鎖し、今度は流入してきた海水を別の区画に移動させる。
そうして艦艇の水平を保つのだ。
そして2つ目
それは速力だ。
最大34ノットで航行可能で主機に蒸気タービン8基搭載しスクリュープロペラが6軸と足周りについてはかなり手が込んでいる。
スクリュー形状については完全な軍事機密なので何一つとして言えないが、主機についてはかなり熱効率がいいらしい。
熱効率はなんと驚異の57%だ。
そしてその熱も利用して電気を賄っている。
もちろんメインで電気を作っているのは主機だが。
そんな空母をカメルーン近海に送ってくれるというのだ。
なんと心強いものか。
「その空母はどこに来るんです?」と弥島は聞く。
空母は近距離で戦闘する艦種ではない。
どこに停泊するかはかなり重要なことだ。
大臣は即答する。
「それについてはすでに決まっている。」
大臣は地図のある場所に指さした。
「リベリアだ。」
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