第11話 夏季休暇編-3
首都に控えていた防人様に対面するとすぐに彼らは突っぱねられ、城下を散策することになった。
「まったく、彼女はいったい何を考えているんだー」と期待外れだったことで気が抜けたラニーニャは城の外門をでてすぐに言った。
空にばかり気を取られていた彼女にとっては首都も防人様についてほとんど知らなかった。そんな彼女が初めて地上に興味を示したというのに、最初がこれでは今後彼女が地上に目を向ける機会はさらに減ってしまいそうだ。
「確かに私も何を言っているのか理解できませんでしたが、彼女の発言を信じるのならば後先短い私の人生はさらに短縮され後悔を残すことになるでしょうな」
「まぁそん時は爺さんだけでも生きて帰してやるよ!だからそう心配すんなよ!」
「そうですよ英樹さん!お孫さんもおられるんでしょう?だったら尚更生きて帰らなければなりませんよ?」
「グスコーニュ...ディビレット...ありがとう。若者に生きろと言われるのはうれしくもあり、心苦しい側面もあるものだな」
弥島は数秒瞼を閉じ感慨浸っていた。
「性別も年も関係ない。ただ大切な人の前に生きて立っていられるように勝ち進んでいくだけだ。この先に死が待っていようともな!」
ラニーニャは弥島の肩に手を乗せ、かわいらしい笑顔を向けた。
その後彼らは予言について考えることなく城下の観光を楽しんだ。
問題も無く、ただ平穏な時が流れた。
完全に空が暗くなり幾分がたった頃、城下町を堪能した彼らはキュアシェットの元へ向かって歩いていた。
その時、ラニーニャの後ろで誰かがささやいた気がした。
「大丈夫よ。死を恐れないで。私が守ってあげるから...」
後ろに振り向いても賑わう商店街しか視界に入らなかった。
なんだったんだと思考するラニーニャであったが、何故か不安な気持ちは過ぎ去った。
彼女はどこか懐かしく、温もりを感じた。
そんなことも忘れかけたころ、城門前で腕を組んで顔をうつ伏せながら待機していたキュアシェットを見つけ合流した。
「みんな戻ってきたんだね。どうだったこの街は?」
「私はこの美しく賑わっているこの都市を守りたいと思いました。」
「私が欲しいのはそんな堅い感想じゃないんだよラニーニャ。」
ラニーニャは困惑した。
ラニーニャ自身は本心だと思っているのかもしれないが…
「私が聞きたかったのは"今日、楽しかった"って事よ?」
ラニーニャは、はぁ…とため息混じりに音を漏らした。
それからラニーニャは答えた。
「今まで地上には興味がありませんでしたが…今日はその、とっても楽しかったです!」
キュアシェットは無言で頭をゆっくり縦に降っていた。
少し嬉しそうな表情をしている。
もしかすると彼女は地上の素晴らしさ、楽しさを知る事が国を守る人達の士気向上に繋がると考えて今回のようなことをしたのかもしれない。
そしてまたキュアシェット話し始めた。
「私の目的は達成された。とても満足したよ!じゃあ、後はお土産でもなんでも私が奢るぞー!電車の出発に間に合うようにね!」
と言って、隊員達はキュアシェットに着いて行った。
電車にも乗り遅れずまた3時間程かけて基地へ戻ると正門に彼女が待っていた。
「待っていたよ、ラニーニャ少尉」
「キーニャケティ国防大臣…!」
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