第9話 夏季休暇編-1
チャド攻略から約4か月後
この4か月、チャドの下にあるカメルーンと中央アフリカを奪還し、今作戦の要となる北緯5度を基準に東西に延ばされた長大な防衛線を張るべく、敵本土から続々と飛来する敵陸・空軍勢力を足止めするため毎日のように出撃していた。
そのかいあってか4月27日にようやく長大な防衛線が完成した。
軍部はこれを
東西4300㎞続くこれが建設されたことにより、こちら側は新たな帰還ラインを設けることができる。
これまではアルジェリアやエジプトしかまともに帰還できる基地が無かったが、CB-Lが大陸北部へ進軍しようとする敵性勢力を妨げてくれるので比較的安心して基地を建設することができる。
おかげで6月にカメルーンと中央アフリカに新たな基地”カメルーン第一拠点-KM/D1-A”と”中央アフリカ第二拠点-SA/D2-B”が建設された。
これにより敵に対して迅速に活動できるようになった。
まだ本国との完全な補給路の確保はできていないが、3か月程度ならばエジプト・アルジェリア、12ヶ国連合王国からの補給で事足りるだろう。
どれも潤沢にと贅沢は言ってられない。戦闘ができるだけありがたいというところだ。
1955年 7月5日 9:22
最前線は陸軍に任せて、空軍らは一度KM/D1-A・SA/D2-Bからいつの間にか建設されていたスーダンの第三航空基地を経由してRA国第一空軍基地へと帰還した。
ラニーニャは基地に着陸し機体を倉庫へと直接格納した後機体から降りると、格納庫前方の扉付近にキュアシェット・グレートテムラートが大きくにこやかに手を振っていた。
こちらも手を振ると、キュアシェットは手招いた。
何の用かと思い整備兵と別れを告げて彼女の元へと駆けると、「久しぶりだね~隊長さんっ!」とご機嫌に挨拶をしてきた。
「整備長も元気そうでなによりです。...それで何か御用で?」
「そうそう!隊長たちにプレゼントがあるんだ!」
「プレゼント?整備長が?」と頭で思ったことを言うと
「何?整備長がプレゼントしちゃいけないの?!」と少し怒りっぽくなってしまった。
「いえそんなことは...それで、隊員を連れてきたらいいんですか?」
「うん~そうだけど....。まぁ、とりあえず全員私服に着替えて正面門2B2CDまで来てほしいな!そうだねぇ~、10時に集合ってことでお願いできるかな?」
「分かりました整備長。みんな連れていきますよ」
「じゃあまた後でね~!」
キュアシェットは手を振って走ってどこかへと向かった。
彼女の背中を見つめながらまぁなんだっていいやと思い、そのまま隊員6名を呼びに各格納庫をまわり、第303飛行隊-会議室へと戻って支度した。
「隊長!ホントにわからないんですか?その整備長の目的とやらは」
話しかけてきたのはディビレット・サルターノ・ジェロータだった。
「あぁ、着替えて正面門まで来いとしか言ってないからな。ディビなら分かるのか?」とラニーニャは逆に聞いてみる。
「私は分かりますよ!よく考えてみてくださいよ!」とディビレットは元気に言った。
ラニーニャは少し引いた。
続けてディビレットは話す。
「だって7月ですよ?!7月はと言えば夏ッ!とは言っても少し早いですが...、太陽が燦々と照り付けるこの季節なら、その時期に合った遊びをするのが普通じゃないですかー?!」
徐々に興奮していくディビレットの口は止まらない。
「そう、夏と言えば....海ですっ!!」
「海ねぇ~」とラニーニャは相槌した。
まだまだ止まらないディビレットの様子を支度を終えた男たちの一人であるゼッペン・ハイヤーは「隊長らはいかないんっすか~?早くしないと整備長にどやされちまうぜ?」といって男5人は正面門へと向かった。
「それもそうだな。よし!早く着替えて行くぞ、ディビ!」というとしゃべり倒していたディビレットは正気に戻って「はい隊長!」と返答して急いで支度し、部屋をでた。
10:00 RA第一空軍基地 2B2CD
「みんなおまたせー!」とディビレットは大きな声で2B2CDの検問前へと走った。
ハイヤーは「おせーぞ!あと一分遅れてたら怒られるところだったんだぜ?」といった。
そんな彼にディビレットの後に着いたラニーニャは「すまないな。女の子というのは雑な男よりも支度に時間がかかるものだから。そうだろ爺さん?」
「そうですな。お前たち、隊長殿は軍人といえどお美しい女性です。雑に扱おうものならディビレットに殺されますよ」と弥島は爺さんらしく若い女性をフォローする形で、相槌をした。
「でも確か隊長って城塞都市フェルメル生まれの
「なんだ、私が今年56になるからっておばさんと思いたいのか?どうなんだ...ハ イ ヤ ー く ん ...?」と顔を近づけ圧をかけた。
するとハイヤーは慌てて
「いーやいやいや!そんなこと無いって隊長!」と言ったが、”ん~~?”と、さらにラニーニャは顔を近づけ圧をかけた。
「なんだよ隊長!もう許してくれー!」とハイヤーは叫んだ挙句、身体を反らしていた所にラニーニャが追い立てた為体勢を崩してしまい、コンクリートで固められた白い歩道に尻もちを着いてしまった。
ラニーニャは「見た目も中身も19歳なんだ、エルフの体質上仕方ないんだから気にしてもしょうがないだろ?」と言って笑って見せ、地に着いたハイヤーに右手を差し伸べた。
「隊長には叶わねーや!」とハイヤーは言ってラニーニャの柔らかい手を取って立ち上がった。
すると建物の陰から私服に着替えたキュアシェットが出て、こちらに気が付くと「おまたせー!」と言って走り寄ってきた。
「ラニーニャにハイヤー、ディビ、グラドにウェンズ、グスコ、弥島....うん、全員そろってるね!じゃあ行こうか!」と言って正面門2B2CDの改札を通り抜け、基地外にある社員用駐車場にて10人乗りのミニバンに乗車して国道を通じて高速道路に侵入した。
向かうのはアラビア半島南部に位置する首都「超越性自己完結型城塞結晶都市-アヴァンジュル-」だ。
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