チャド要塞攻略編 ~大陸解放に向けて~

第6話 大陸解放に向けて1

~ 12月13日 アルジェリア航空基地 ~


翌朝08:00に起床しアルジェリア航空基地を飛び立ったタリバリン中隊を含む104もの戦闘機は旧モロッコ西サハラ、モーリタニア、マリ、ニージェル、チャドの各方面に分かれて行動を開始した。


~ 12月13~12月18日  ~


初日は各方面問題なく敵地上・空中部隊を撃破できていたが二日目以降になると、敵本国より北側にあるであろう敵陸軍・空軍基地から呼び寄せた車両や機体が戦場を埋め尽くしていた。

こちら側の陸軍部隊、特に戦車部隊の到着がまだであるため空軍は空だけでなく敵地上部隊も相手にしなければならず、燃料と武装補給に何度も最寄りの基地へと帰還する事態となってしまった。

四日目にもなると奪還目標だったチャドが敵地上部隊が粘り強い抵抗を見せていたため被害の少ないところに敵軍は強固な防衛拠点を築いていた。

敵地上基地周辺にはAAGUN対空機銃RKTL-TRUCKロケットランチャー搭載トラックSAM地対空ミサイルTANK戦車など...

主に地対空兵器が増設され、戦闘機も容易に近づくことができない状態に陥っていた。

近づけばAAGUNにハチの巣にされる未来があるのはここにいるすべての戦闘機乗りが理解しているのでそこへ飛び込む奴が居ないのは良いことだが、逆に言えば切り込み隊長が居ないという風にも言える。

AAGUNの餌になりたくないが敵の防衛陣地は早く壊しておきたい。

AWACSも言っていたようにこちらの被害は許されないため、戦場は膠着状態に陥ってしまった。


~ 12月22日 チャド ~


この10日で旧モロッコ西サハラ、モーリタニア、マリ、ニージェルは順調に奪還されていき、最後に12ヶ国連合王国が12月20日にRA国の陸軍・空軍の協力によって奪還が完了した。

だがチャド奪還が開始されてから10日が経過した今日も戦況は相変わらずといった所だった。

戦線は膠着し機体、パイロット共に疲弊しており、最前線で戦闘を続けているパイロットはタリバリン中隊三番機のタリバリン3、サンデルア・グラドファリドだった。

普段彼は飛行教導軍、アグレッサー部隊主導で毎日行われるランク戦で昼夜問わず寝る時間を惜しまず燃料が無くなるまで飛び続けていられる、常人ではありえない程の忍耐と体力、気力を持ち合わせているパイロットだ。

チャド奪還に参加していた他の隊のメンバーは長期に及ぶ戦闘によって疲弊し、彼らはエジプト空軍第2基地に帰還し身体を休めている。

同時に機体の整備が行われ、現在エジプトに帰還した16機のうち8機の整備が完了している。その8機もすぐにチャドに向かってくると予想されるが、いずれにせよ現在チャドで交戦しているタリバリン3を含めた4機では戦線を維持することは難しい。


~ 12月22日 チャド 18:47 ~


連戦で溜まりに溜まった疲労がグラドファリドの身体に現れて来た。

ハイG機動で意識を保つだけの気力も無い...集中力も息も切れてきている。


「ハァ....ハァ....ッ、ハァァ...ッ....」


息もすこし前と比べてかなり荒くなってきた。

視界もぶれてきている。

操縦桿を握る手はかすかに震え、両足には力が入りきらない。


機体制御も上手くできなくなる前に帰還した方が安全だと判断したのか、タリバリン3は無線で「体が限界だ、一度帰還する」と言ってエジプト空軍第二基地へと向きを変えて飛行し始めた。


残りの三機は「ラジャー、我々も同行し援護する」と言って戦地で戦い続けていた4機はエジプト空軍第二基地へと再び向かった。


それから2分ほど飛行していると4機に無線が入る。

「こちらAWACSジャンバール、そこの4機に朗報だ。君たちが足止めしていたチャドにすべての味方戦闘機を向かわせる準備が先ほど整った。君たちチャド特別編成隊はエジプト空軍第二基地にて身体を休ませろ。7日間の間は君たちチャド特別編成隊の出撃を禁ずる。繰り返す、7日間の間出撃を禁ずる、以上だ」


そう言って回線を切ったAWACSの無線の後、チャド特別編成隊の4機のパイロットは大きなため息をした。

AWACSの無線に喜ぶものも居たがそれよりも身体に溜まった疲労の規模が大きい。

連日敵の攻撃を交わすたびに受ける強力なGは身体に大きな負担になり、疲れでAWACSの無線を半分も聞き取れないパイロットもいた。


そんな中ピーと高い音と共にまた通信が入った。


「聞こえるかタリバリン3、こちらタリバリン1、現在チャドに4つの特別編成隊を合併させたチャド大規模空襲隊を率いてチャドへ向かっている。AWACSの話では本国の第2・第3空軍基地から応援が来るみたいだ。数はわからんが、とりあえずAWACSの命令通りにエジプトで休んで来い。」


直後無線は切れた。

最後まで聞き取ったタリバリン3は静かなコックピットで「あぁ...隊長かー。助かります....」と声色でも疲れ切っていることが分かるぐらいに息切れしながら小さくつぶやいた。


1分ほどからしてタリバリン3は座席で自身の位置を合わせた後3機を連れてエジプトまで夕焼けがよく見える空を飛び続けた。


~ 12月22日 エジプト空軍第二基地 19:55 ~


機体をふらつかせながらもしっかり滑走路内に着陸、その後低速で倉庫近くへと機体を誘導させ止めた。


コックピットを開けてシートベルトにマスク、ヘルメットを外して停止後コックピット右側に掛けられた梯子を使って地上へ降り立つと足がふらつきとても立続けられる状態ではなかった。


整備兵が近くの軍用ジープに乗っていた将校に声をかけ、グラドファリドを病室まで送り届けた。

同じくグラドファリドと同じ空で戦って生き延び、帰還した3人も違う車両で病室へと送られた。

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