第5話大空の覇者
~ 12月12日 10:22 エジプト空軍 第二基地 ~
リビア地区奪還作戦が開始されて三日。
初日に現れた謎の敵性航空機を撃墜した少尉はあの後リビアへ全速力で向かい陸軍のフォローをAWACS管制の元行っていた。
敵の地上基地の破壊、交通ルートの閉鎖など敵側に有利を取らせないためにリビア地区外から空軍は攻め、陸軍はエジプト側からどんどん進撃して区画ごとに分散・攻撃をしていた。
そんなことをしているとリビア地区はほぼ奪還に成功したといえる状態にまでになった。
まだ街中に反抗勢力がいないとは言えないが、間違いなく敵国からリビア地区を解放できたことはRA国にとても良い始まり方だともいえる。
三日目の05:00にはAWACSからの通信でリビア地区の奪還に成功したとの報告が入り、空軍はそれを聞いて一度エジプト空軍第二基地へと帰還した。
隊員たちも疲れており用が済むと基地内へ入り各々貸し出された部屋で睡眠を取った。
それはタリバリン中隊の中隊員も同じで大半が部屋のベットで寝てしまった。
10:00になるとまた招集がかかり地下ブリーフィングルームへと向かった。
10:22分になると例によって大臣が壇上に立っていた。
「陸軍と君たち空軍の協力でリビア地区を素早く奪還することができた。これは非常にいい一歩だ。この調子で次の作戦もスムーズに行ってもらいたい。それで本題なんだが、次の作戦を実行する前に君たちにはここエジプトからアルジェリア航空基地へと飛んでもらいそこを中心に作戦を開始する。今回は奪還する場所がかなり多いため今からよく聞いてもらいたい。」
大臣はそういって作戦の詳細を話した。
まず奪還する地域が旧モロッコ西サハラ、モーリタニア、マリ、ニージェル、チャド、そしてセネガルからナイジェリアを含め存在するすべての小国”12ヶ国連合王国”の全6地域だ。
リビア地域からでは12ヶ国連合王国は作戦空域外なのでアルジェリアに移動して半径2000㎞以内の作戦空域に収まる様にカバーするようだ。
ちなみにエジプト空軍がエジプトを中心にRA国と同じ作戦を実行するようで、ニージェル、チャド地域での作戦では共同作戦となる可能性がある。
そして本作戦で最重要なのが、これらの国を解放した上で北緯5度を基準に長大な防衛線を張ると言うことだ。
RAとエジプトの他、RAの同盟国の陸軍・空軍と協力して防衛線の構築をすると共に攻撃の手を強めるであろうテイン・ストケル国の攻撃を凌ぎ切り完璧なまでの防衛線と防衛陣地を築くことが出来れば、北緯5度より北に位置する国々の安全は保証されるに違いない。
北緯5度に到達する前にこちらの戦力が少しでも削がれると成功しない可能性が高いため、かなりリスキーな作戦になるがこれ以上敵の侵攻を許す訳にも行かないためこの作戦を実行する他に無い。
以上のことを大臣は壇上で話した後、解散と言って壇上を降りてしまった。
そして空軍兵は地下ブリーフィングルームから退出し早速アルジェリアに向かう準備を始めた。
~ 12月12日 13:00 アルジェリア航空基地 上空 ~
アルジェリア航空基地へ近づくと敵機の反応が自機に装備しているレーダーMAPに映った。その数は徐々に増えていき、後ろで索敵していたAWACSアヴェンジャーが無線をつないだ。
「こちらAWACSアヴェンジャー、全機に警告!この先に大多数の敵性反応を確認!これを直ちに撃墜せよ。武装解禁、交戦を許可する!生きて戻ってこい、以上だ」
AWACSは空中で編隊飛行を続けていた10中隊104機に向けて無線で命令を飛ばした後、戦闘空域で巻き込まれないように後方へと移動し始めた。
それと同時に後ろで待機していた双発ジェット空中給油機”KC-A4”も後方へと向かっていった。
交戦許可が下りた全機は一斉に最大推力で敵機の方向へと向かっていった。
しばらくすると敵機体も目視できる距離にまで差が縮まっており各自交戦を始めた。
タリバリン中隊も例外なく戦闘空域へと飛び込み、交戦を開始した。
~ 12月12日 13:30 アルジェリア航空基地 上空 ~
交戦開始から30分が経過したが、敵反応が減っている気がしないとタリバリン1が思っていると、少し下で交戦していた
「こちらヒューザー5、アルジェリア航空基地から次々に敵航空機が空へ上がってきている!至急攻撃を頼む!このままではやられてしまうぞ!」
ヒューザー5はそういいながら敵機の攻撃をひらりとかわし基地がある低空へと降下していった。
それを見たタリバリン1は全機に無線をつなげて言った。
「こちらタリバリン1。上空は任せろ。
するとそれを聞いた各中隊長は了解と言って素早く地上へと向かった。
~ 12月12日 14:00 アルジェリア航空基地 上空 ~
味方機が地上戦力を叩き始めてから敵機の数は着実に減少し、計300機ほど滞空していたすべての敵性航空機をタリバリン中隊の7機が足止め・撃墜をしたおかげでなんとか味方の損害は0に収まった。
地上・上空ともに敵性反応がAWACSのレーダー上でも消えたので、ロングバット中隊の10機を周辺の偵察に向かわせた上で地上へと降り立った。
基地へ降り立つと出迎えてくれたのはアルジェリア陸軍第113師団団長を務めているウェルズ・マカントニー大佐だった。
「お久しぶりです、タリバリン中隊の皆様。アルジェリア陸軍第113師団長のウェルズ・マカントニーだ!本作戦で我々も君たちに協力させてもらう予定だ。よろしく頼むよ」
大佐はそう言ってラニーニャ少尉と握手を交わした。
「こちらこそよろしく頼みます大佐。大佐は今作戦の詳細について説明は受けておられるのでしょうか?」と質問すると大佐は
「えぇ、もちろんですとも。今作戦はあの大臣が直々に立案された物でありますから事細かに聞いております。問題はありませんよ!」と自信げに答えた。
少尉が周辺の状況を見ていると大佐が話を始めた。
「酷いものでしょう。この基地も少し前までは我々アルジェリアの軍が守っていたのですが、敵の攻撃が日々強くなるにつれて我々の防衛能力の質も落ちてきまして…最後には敵に基地を奪われ、離陸を許してしまったのです…」
自国を防衛出来なかった大佐の物悲しさが言葉越しに伝わってくる。
「そこに私たちが来て状況が一変した、と?」と少尉は言う。
「そうです。貴方達が来ていなければ2日も持たないうちに我々は全滅していたでしょう。」と大佐は言った。
基地周辺は敵機の残骸と灰色の煙が立ち込めており、アルジェリア陸軍が基地内に残っている兵達で片付けをしている。
車や重機などを使ってなんとか元に戻そうとしていた。
そんな様子を大佐と少尉、少尉の後に浮いてきていた中隊員と共に眺めながら基地内を歩いていると、大佐が前で止まり、こちらを振り向いた。
「すまないが私はここで失礼させてもらう。機体の整備、修理は私たちに任せてもらっていいから、君たち空軍は今日1日だけでもゆっくりしていくといい」
と言って独りでに歩いて言ってしまった。
「では我々も身体を休めるとするか。私とグラドファリドはかなり前にこの基地で世話になったことがあるからある程度なら案内できるぞ?グラドファリド、案内頼めるか?」
少尉はタリバリン中隊三番機担当のサンデルア・グラドファリドに問いかけた。
グラドファリドは「問題ありません少尉。お任せください!」と生きのいい返事をした。
その言葉を聞いて少尉は「なら良し!」と言った。
それからタリバリン中隊は二手に分かれてアルジェリア航空基地を回った。
~ 12月12日 19:00 アルジェリア航空基地 ~
あれから隊員たちは二手に分かれながらも滅多に来ることがないアルジェリアに来たことで貴重な体験をしたことだろう。
自国にはない整備設備やより先進的に改良されたデジタルフライトシミュレーターが設置されており、非常に有意義な一日であった。
19時を回りこの基地を体験しつくした隊員たちは偶然にも第1棟の北玄関で合流した。合流した彼らはこちらに用意されている部屋へ向かおうとした。
用意されている部屋へ行くには一度基地の第11倉庫近くへ出てから4棟へと向かうのだが、その道中に
そんな彼らに少尉たちは大きく手を左右に振った。
すると彼らも手を挙げて左右に振った。
そして無事に自分たちの部屋に到着し入室すると隊員たちはシャワーを浴びる者やトランプで遊ぶもの、料理を作るものに分かれて自由にしていた。
やることも終わり23時になるころには隊員たちはベットで就寝した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます