第4話 KMー2000作戦

~ 12月9日 08:00 RA国第一空軍基地 ~

エジプトへと向かうパイロットが朝一斉に動き出した。

今回エジプトへ向かう隊はルファ中隊12機・ヒューザー中隊12機・ブリアント中隊12機・グーゴレ中隊12機・テュール中隊12機の五ノ防人ペンタゴンとスザーク中隊5機・ロングバット中隊10機・ガルト中隊10機・フェジン中隊12機、そしてタリバリン中隊7機の全10中隊、104機の戦闘機が第一空軍基地から順に飛び立っていった。


~ 12月9日 09:00 エジプト空軍 第2基地 ~


1500㎞程度で44分間飛行して隣のエジプトへとやってきたRA機らは順にエジプト空軍基地の滑走路へと着陸していった。


指定の場所までタキシングして機体を止めるとすぐに機体から降りてヘルメットを腕に挟み、建物へと向かって歩いた。


建物内へ入って”地下ブリーフィングルーム”という名札を見つけて躊躇いなく足を進めていくと小さな映画館くらいの広さがある部屋にたどり着いた。

中は暗く、前方にあるプロジェクターから放たれる光しか見当たらなかった。


20分もするとほぼすべての席が埋まり、30分経つ頃には部屋一杯になっていた。


~ 12月9日 09:32 エジプト空軍 第2基地 ~


30分も過ぎたところで前方の壇上にキーニャケティ・グレートテムラートが暗闇から突然姿を現した。

彼女の体は室内のライトで照らされ少し離れたところで見ている少尉の目にもはっきりくっきりと見えていた。


彼女は卓上に両手を付き、マイクに顔を近づけて話し始めた。


「私はキーニャケティ・グレートテムラート作戦担当官だ。本作戦はこの私が責任をもって指揮する。今回君たちが参加するのは”MKエムケー2000ツーオーダブル作戦”だ。本作戦は一段階ずつ行うため、本日は作戦第一段階について説明する。

作戦第一段階はリビア地区の奪還だ。リビア地区は20区画あるうちの14区画が敵によって占拠されている。各区の中心には敵の拠点が構えられているらしく、頑丈な建物では無いとの情報があるため速やかに区画ごとに開放を進めてもらいたい。今回地上部隊をメインで実行するため空軍の君たちは陸軍のフォローに入れ。ちなみにリビア地区最西端である第3区画とその周辺の地域は守りが硬く、地対空ミサイルが配置されているという報告もあった。そのためそこへは五ノ防人ペンタゴンのルファ中隊を向かわせる。その他の部隊は基地から離陸後AWACSの管制下に入り各区画に振り分けてもらえ。私からは以上だ。その他の点については他の将校たちに任せる。」


そういって彼女は壇上を降りてどこかへ消えてしまった。


その後陸軍兵と入れ替わるように空軍兵は地下ブリーフィングルームから川の流れのように緩やかに退室した。


少尉がそのまま自機へ向かおうとするとタリバリン中隊6番機のアブラハム・グスコーニュが話しかけてきた。


「隊長!さっきのブリーフィングどう思うっすか?俺からするとあんまり良い作戦だと思えないっすよ!わざわざ陸軍と足並みそろえてやらなくても俺たち空軍がリビア地区一体の制空権の確保と敵拠点の爆撃を行えば奪還なんてすぐに完了するじゃないっすか!」と作戦への不満を吐いた。


少尉は「まぁこちらとしてはその方がいいだろうが....作戦指揮の点において私はそこまで能力があるわけではないから何が一番いいのかはわからないな。」などと応答していると


人ごみの中彼を探していたタリバリン中隊4番機の彼女、ディビレット・サルターノ・ジェロータが人ごみの中をかき分けて寄ってきた。

「グスコーニュ、何やってるんだ?アタシと飯食いに行くんじゃなかったのか?」


「あーすまねぇディビ!今行くとこだったんだよ!!」とグスコーニュは慌てて言った。


少尉も「すまないディビ、私が少し引き留めてしまったようだな。」というと

ディビレットは「隊長が謝ることはありませんよ!それも全部グスコーニュが悪いんですから!」と言ってディビレットはグスコーニュの頭をこぶしでぐりぐりと突いた。

少尉は二人を気遣い「今から飯をくうのだろう?なら早く行ってこい。ここの基地ではターメイヤなるコロッケがあるが11時までしか販売していないからもし食うのなら早く向かった方がいいぞ」とアドバイスをした。

二人はありがとうございますと言い残して外へ走りだしてしまった。


「楽しそうだな、あの二人は」と少尉は小声で言い少しばかりの笑みを浮かべた。

ポケットに隠し入れていた黒いサングラスを胸の内ポケットから取り出してモダンが取り付けられたテンプルを耳に掛けてから少尉は自機へと再び歩き出した。


~ 12月9日 10:10 エジプト空軍 第2基地 ~


少尉は自機の左翼下に座っていた。

各部隊ごとに指示が出され滑走路を見ると次々に機体が離陸している様子が見えた。

その様子を見ているとコックピットから外へと垂らし落としていた無線機から通信が入った。

すぐさま少尉はコックピット左側へと移動し無線機を手に取った。

「こちらエジプト空軍第二基地管制塔、タリバリン中隊出撃準備を始めろ。完了次第こちらで誘導する。繰り返す、こちらエジプト空軍第二基地管制塔、タリバリン中隊出撃準備を始めろ。完了次第こちらで誘導する。」


少尉はすぐさま了解と言って管制官に返答した後すぐに出撃準備を始めた。

2分ほどすると中隊機7機の準備が整った。

直後管制官から無線が入った。

「こちらエジプト空軍第二基地管制塔。タリバリン中隊今からこちらの指示に従いタキシングを行え。」


そう告げられたあと7機は少尉の機体を先頭に管制塔の指示で滑走路までタキシングを始めた。


管制官の指示に従って滑走路へ出ると、離陸の許可が下りたためスロットルを上げて機体を加速させ空へと羽ばたいていった。

残りの隊員たちも少尉に続いて空へと上がり全機揃ったところでリビア地区へと方向転換し向かい始めた。


~ 12月9日 10:10 リビア地区 第16区画 ~


リビア地区第16区画の上空を飛んでいるとAWACSから通信が入った。


「こちらAWACSアヴェンジャー。聞こえるかタリバリン1」


「こちらタリバリン1、どうぞ」

少尉は簡単に応答するとAWACSから怪しい情報が舞い込んできた。


「タリバリン1、南西900㎞地点に謎の敵正反応をレーダーにとらえた。数1。至急向かい撃墜せよ。」


南西900㎞地点...あの辺りはニージェル国があった場所だ。そこからリビアに向かってくる機体がいる。しかも単機で


少尉は怪しいと思いながらも「タリバリン1了解」といった。


「タリバリン1、タリバリン2ー7はどうします?」とタリバリン2は言う。


「あぁ、お前たちはリビア地区の奪還に専念してくれ例の目標は私が仕留める」と命を下して中隊は二手に分かれた。


~ 12月9日 10:22 ニジェール ディレク上空 ~


10分ほど飛行しているとレーダーが反応を示した。

確かにレーダー上で反応を示したのは一機だけだった。

そのまま目視による確認もしていたら突然アラートがコックピット内に鳴り響き警告灯が真っ赤に明滅していた。


少尉は少し焦るが、レーダーを見て敵の位置を把握しながら敵機から放たれたミサイルを交わす。

するとアラームは止んだ。しかしまたアラームが鳴る。

常にロックオンされている状態だ。

敵機を振り切ろうにもぴったりと背後に食いついてくる。


試しにマニューバ”コブラ”を使うが背後をとった瞬間に敵機はマニューバ”クルビット”を使用してまた背後に食いついてくる。

どれだけ横に振ろうとも敵機の先端は常に少尉の機体中央の軸を指している。


一度高度を取ってそこで少尉はクルビットを使用。機体を真下にいる敵機に向けなおし、少尉は真正面から突撃する。


すると敵機は少尉をロックオンし、ミサイル4発を放った。

その後敵機は反転し尾を巻いて逃げるように低空と逃げていく。

その間にミサイルは少尉に向かって高速で迫ってくる。

少尉はロールでそのすべてを回避、低空に逃げた敵機を追う。


だが敵機はいつの間にか少尉の背後を取ってまたロックオンをする。


鳴りやまないアラームに嫌気がさした少尉はコブラを発動させて敵の背後を取る様に見せかけて続けざまにクルビットをした。


敵機はコブラをする少尉の機体を追い抜いた後クルビットをして背後を取ろうとしたがその時にはすでに少尉は敵機と同じクルビットを実行して少尉の背後を取らせないように対策した。


いままでさんざんしつこく追い回された少尉だったがHUDに収まる様に敵機を補足し続けロックオンした。

直後少尉は操縦桿にある赤いボタンを2回押して「FOX-2!FOX-2!」と叫んだ。


放たれた二発のミサイルは高い誘導性で敵機の後をしっかり追尾し、ミサイルを避けようと敵機はクルビットをするが運悪く右翼に直撃。

機体はバランスを崩し、中に入っていた航空機燃料に引火し機体は炎上。

そのままディレクの荒れた大地に落下していった。


少尉はその姿をはっきりと視認しながら「何者なんだあのパイロットは...」と口にだした。

落下していく途中で敵機は空中で爆散し、爆発音をとどろかせた。


少尉は安堵しそのままリビア地区へと全速力で帰還した。


~ 12月9日 10:30 ニジェール ディレク上空 ??? ~


被弾し翼が折れた機体は燃料に引火し今なお落下し続けている。


「なるほどな、そりゃあの国で強いと言われるもんだぜ..へへっ!」

彼は少しうれしそうだった。口元にもその気持ちが表れていた。


「少尉、これで終わるなんて思ってねぇーだろうな?さぁ、続きだ...」


彼は機内でそう言い残したあと座敷下のレバーを引いて機材の焦げた匂いが充満するコックピットから脱出した。


直後機体は空中で爆散。機体を構成していた金属部品らは地上へと散り落ちていった。

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