第2-13話 始動
「はぁ……。はぁ……。あと、何個残ってるんですか……?」
「えーっと、残りは大体1400個くらい、です」
「嘘でしょ……?」
あれから数日、ひたすらソフィア先生と一緒に本に乗っているテストを試しまくるばかり。
朝から日が沈むまでずっと何かをやり続けるというのはシンプルにしんどいものがある。だが適性を知るためなのだ。そう言うわけでモヤシ男な俺は、一生懸命与えられた課題をこなしていたのだが、やってもやってもキリがない。
しかも、そのテストに何一つとして反応が無いというのは虚無にもなって来ようというもの。
「今日はちょっと早いですけど、ここまでしておきますか? ユツキ君も、疲れてます、から」
「はい。そうしてもらえると助かります……」
俺はグランドに横たわった身体を起こす。周りには部活動なのか、それとも研究なのかは分からないが魔法使いたちがあちらこちらに散らばっていた。
「そう言えば、
俺は服についた土を払って、そう尋ねた。
そう。
俺はユウを殺した後、隙を見て地上に降りてステラと合流。そのまま王都に向かうつもりだった。
だから、いつ動きだすのかと思って冷や冷やしているのだが全く動く気配がない。
「え、えっと……。私は、移動計画者じゃないのです……。なので、詳しくは分からないのです、が……」
うんうん言いながら、それでも生徒の疑問に答えようとしてくれるソフィア先生は本当に良い先生だ。
「北にある、皇国……から、“聖女”が、やってくる。そうなのです」
「聖女?」
皇国と言えば、大戦中に多くの“
「はい。その“聖女”さんが、ユウ先生と会いたがっているんだそう、です」
「へぇ。それってユウ先生が“
そう言うと、ソフィア先生は顔を曇らせた。
「否定はできない、です……。ユウ先生の持っている力を求めて、“聖女”さんがやって来てるかも知れませんから」
「それで……。その“聖女”が来るまで
「はい。そういうことです」
「なるほど……。ありがとうございます」
俺は箒を手に取って、ソフィア先生に向き直った。
「では先生、また来週」
「はい。また来週」
先生は微笑んで、俺を見送ってくれた。俺はふっと空に飛び上がると、シェリーとの家に帰る……途中でシェリーと出会った。
「お疲れ様です。ユツキさん」
「ああ、お疲れ」
「どうです? 一週間が終わってみて」
「テストが、中々しんどいけど……。でも、楽しいよ。ありがとう」
「ユツキさんに喜んでいただいていけて何よりです」
微笑むシェリー。そこで俺はタイミングを見計らって尋ねた。
「明日の休みで下に降りれるか?」
「インダスタルにですか? はい。大丈夫ですよ。
「そっか。じゃあ、ちょっと降りてくるよ」
「……動くんですか」
シェリーは俺のことを
これから何をするのか、それすら分かっている。だから、声を潜めて聞いていた。
「ああ。動く」
「……お願いします。アイツは、私の家を滅茶苦茶にしたんです」
「…………そうか」
何があったか、それを詮索するつもりはない。彼女が自分から話すなら、それを聞こうとは思うものの、自分から話さないのであればそれをこちらから聞いていくのは不作法というものだ。
「俺も、何とかしてみる」
息を吐く。
ユウはまだこの街に戻ってきていないらしい。動くなら、今だ。
「任せろ」
俺たちはそれから何もしゃべること無く、家に帰った。
翌朝、太陽が昇ってしばらく経つのを待ってから俺は箒に乗って出かけた。元々インダスタルから来た俺ならともかく、
そこら辺を了承してもらって、俺は下に向かった。
地面に降りる瞬間で減速、すっと降りるとそのまま宿に向かった。
「あれ? ユツキ??」
ちょうど朝食を食べに行くつもりだったのだろうか、ユノとメル。そしてステラの一団とちょうど鉢合わせた。
「良かった。話がある」
「……分かったわ。いったん部屋に戻りましょ」
ステラから話が行っているのか。すぐに、ユノは引き返してくれた。ありがたい。面倒なやりとりは時間の無駄だ。
部屋に上がるなり、俺は口を開いた。
「敵の動きを掴んだ。それで、お前らに話がある」
「何?」
「皇国の“聖女”がやって来る日を知らないか?」
「聖女様? 知ってるわよ。来週の2日目、その日にインダスタルに来るって噂になってるわ」
「……そこで、出会うらしい。
「そうなの? インダスタルの視察だって噂だけど」
「俺がその視察の手前で、目標を殺す。当然、皇国からの“聖女”が来た中で“
「そりゃ……。なるでしょうけど……」
「その騒ぎに乗じて俺たちはインダスタルを抜け出して王都に向かおうと思っている」
俺の言葉にユノが言いづらそうに聞いて来た。
「で、でもアンタは上で婚約者がいるんでしょ? どうするの??」
「……置いていく。俺が全員を殺せば、戻ってくると言えば分かってくれるはずだ」
「…………本気なの」
「ああ」
シェリーの誘いに乗ったのは、ユウを殺すため。
彼女と契約したのは、ユウを殺すため。
「俺は、本気だ」
この恨みを晴らすまで、絶対に止まらない。
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