第17話 オーク狩り
“『隠密Lv2』の獲得によって以下のスキルがアンロックされました”
“『先制攻撃』”
“『忍びの呼吸』”
“『身軽』”
そして、声が消えた。
……え、スキルの説明は…………?
「ユツキ……。…………どこに行った?」
「ここに居るぞ!!」
「…………。……うん?」
けっこう大きな声を出したのに、ステラは全然こっちに気が付かない。ちらりと後ろを見ると、兵士たちはそろりそろりとオークから逃げようとしていたので、俺は兵士たちが持っている剣をこっそり抜いた。
「借りるよ」
「え!? こ、声が!? どこから!!?」
「誰!?」
姿が見えない俺の声にびっくりしたのか兵士は腰を抜かしてその場にへたり込んでしまった。……兵士がこんなんだし、剣を借りても良いだろう。
オークはもう完全に俺を見失ってしまっていて、だらだらと血を流し続ける首を苦しそうに抑えてステラの相手をしていた。ステラには結構余裕がありそうな感じだったが、オークに中々手を出さない。もしかしたら機を伺っているのかもしれない。
どちらにしても、そちらの方がやりやすい。
俺は走ってオークに近づくと、ジャンプ。ふわっ、と身体が3mくらいの高さまで飛び上がった!!!
身軽ね――。天使ちゃんが目を丸くして驚いている。俺も目を丸くして、驚いた。スキルの『身軽』って、ほんとに身軽になるのかっ!!
俺は飛び上がったまま剣を構えると、オークの首筋に狙いすましてそのまま首に剣を突き刺した!!!
「こふっ」
オークの口……ではなく、剣がこんにちはしている喉からそんな音がもれると、オークはそのまま地面に倒れ込んだ。
「へ!? オークが死んだ!!?」「何でぇ!?」
ちゃんと死んだか確認して、俺は『隠密』スキルを解除。
「……流石、ユツキ……だね……」
「『隠密』スキルがレベルアップした」
「……はやく、ない……?」
「平均を知らないんだけど、これ速い方なの?」
「スキルの……レベルアップ……は、才能……。向いていれば……簡単に……上がる……。向いて無ければ、上がらない……」
「ふうん? じゃあ俺には隠れる才能があったってわけだ」
「ボッチ……の、才能……有り…………」
「何だとぉ!?」
引きちぎってやろうかこいつ。
まあ……俺がボッチなのは事実なんだけども。
「さ、さっきの狩人
「……さん?」
変な声がすると後ろを振り向くと、そこにさっきの兵士たちが立っていた。
「あ、あなたがオークを倒してくれたんですか!?」
「そ、そうだけど」
「ありがとうございます!!!」
「おかげで助かりましたぁ!!!」
「そう……」
むさい男に詰め寄られて暑苦しいので無視してオークの死体を解体開始。
「オーク……は、便利……。捨てる、ところが……ない」
「クジラみたいなもんか?」
「クジラ…………?」
「いないのか?」
「……聞いたことが、無い…………」
そ、そっか…………。
こういうカルチャーギャップをどうにかしないと、すぐに“
「オークの肉は……焼けば……旨い……らしい……」
らしいって……。
「骨は?」
「武器に……使われる……」
「内臓は?」
「……旨い」
兵士から拝借した解体用のナイフでオークを斬ると、血液と内臓特有の悪臭がむわっと周囲に広がった。くっせえなぁ……。最初に狙うのは心臓にある“魔核”。それを取らないといけないので、ささっと“魔核”に癒着している肉を斬って持ち上げた。
ゴブリンやスライムの“魔核”よりも透明度が高い。石9割、結晶1割って感じの“魔核”だった。
「綺麗だな……」
「強い、魔物ほど……透明度が……あがる、らしい……」
「らしい」
「見たこと……ないからね……」
ならオークは強いんだろう。何てったって街を守る兵士がまったく前に出ないわけだし……。血にまみれながら、解体をしていると後ろからだまって解体を見つめる2人の兵士の視線に気が付いた。
「……解体手伝ってくれません?」
「はい! 喜んでェーッ!!!」
体育会系のノリですぐに返答した兵士たちにオークの解体を任せると、俺とステラは休憩することにした。地面にすわってぼけーっと空でも見ることにする。
「なあ、ステラ」
「……何?」
「『先制攻撃』ってスキル、知ってるか?」
「…………知らない」
「『忍びの呼吸』は?」
「……知らない」
「そっかぁー」
俺はぼけーっと森を眺めながら考えた。
「狩人ギルドに行けば、分かるかなぁ」
「……あの、コレットが知っていると……思う……?」
「うーん……」
コレットちゃんなぁ……。
悪い人じゃないけど、どこか抜けてるところがあるからなぁ……。
「レイなら知ってるかも」
「……聞いて、見れば…………?」
「そだな」
その前に武器をどうにかしなきゃいけないわけだ。
「解体、終わりましたぁ!」
「肉も内臓も骨もバラバラです!!」
「ありがとう。ついでに運搬も手伝ってもらって良いですか?」
「良いっすよ!」「何でも任せてください!!」
ダメ元で頼んだのだが思っていたよりも好意的に肯定されたのでずっこけそうになった。お前ら持ち場はここじゃないんかい。
というわけでオークの死体を丸ごと『ファウテルの街』に持ち帰ると、兵士たちがオススメする商店にオークの死体を持ち込んだ。
「ふん。あんた狩人かい」
商店の主はだいぶ歳を重ねてそうな老婆だった。すげえ目つきが鋭い。眼付きだけで人を殺せるんじゃないかと思うほど目つきが鋭い。
「オーク1頭を狩るなんて、若いのにやるじゃないか」
「……ありがとうございます」
「どうだい、狩人なんて辞めてウチで働かないか?」
「へ!?」
まさかのヘッドハンティングである。びっくりして変な声出しちゃった。
「行商の護衛さ。良い額出すよ?」
「いや、今はまだ狩人で良いですよ」
「まだ若いんだ。変なことで将来を潰すんじゃないよ」
老婆はそれだけ言って、オークの死体を若い人たちに奥へと運ばせながら、査定のために自分の奥へと入っていった。兵士たちと別れて待つこと十五分。眼付きが鋭いまま老婆が奥から出てきた。
「アンタ、オーク殺すのは何度目だい?」
「……はい? 初めてですけど」
俺がそういうと、老婆はわずかに言葉に詰まった。
「
「ま、マジですか!?」
「首を2突き。他に傷は無し。ああ、惜しいね。今にもウチに欲しいよ」
「……ははっ。ありがとうございます」
「死体丸ごとで金貨1枚に銀貨25枚。これでどうだ?」
金貨1枚は銀貨100枚だ。金貨は大体3枚あれば大体一か月暮らせると言われている。オークって金になるなぁ……。
「ありがとうございます」
「“魔核”も出すなら金貨2枚だすが」
「これはギルドに持って行かないといけないんですよ」
「そうかい」
老婆はそう言って肩をすくめた。
「次もご
若い人たちの声を聞きながら、俺はデカい商店を後にした。ちなみにだが、“魔核”をギルドに持って行ったら討伐報酬として銀貨50枚を貰った。商店で売っていたら銀貨75枚なので25枚分損をしたことになる。
うーん……。
ギルドってケチ臭い……。
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