カバーストーリー

意味は、雑誌等の表紙に関連した記事。でも、自分が扱うのは“こっち”の意味じゃない。


初めてこの言葉を知ったのは、海外のSCPという、創作サイトだった。


その時思ったのだ。『まるで自分みたい』と。


話は変わって、自分は今、高校生だ。高校3年生で受験期という時期だ。


この時期を思い出したくない人は多数いるだろう。でも、自分は覚えていなきゃいけないと思っている。

その時間も、記憶も、思い出も。覚えていなければ、自分は罪になると思っている。


 *


放課後。ふと、顔を上げると廊下は夕陽の光を反射して真っ赤に染まっている。


もうそんな時間か、と思った。集中していると時が過ぎるのが早い。


周りには誰もいない。そりゃそうだ。こんな時間まで勉強する物好きがどこにいるというのだ。


と、その時。


「何してるの〜?勉強?」


と、言ってくる物好きが1人、いた。

彼女は面白いものを見ている目をして、こちらに近づいてきた。


「あぁ、そうだけど…何か用?」「いや?」


と、そう言って、彼女は自分の隣の席に座った。


まるで最初、のように。


「…私も何かやろっかな〜…」と、机に出したのは、国語の宿題の紙束。置くと、『ドサッ』と音が鳴るので、その音がこの宿題の多さを際立たせている。


「君は、授業が終わってからずっと、勉強してたってこと?」

「…まぁ、そんな感じじゃない?」


話題のタネを一瞬で枯らす。会話っていうのは非常に難しいものだ。


…まぁ、主に自分がスパッと切っているだけなんだけど。


「…君ってさ、好きな人とかいるの?」

「…え?」


唐突にそんなことを聞かれて戸惑ってしまう。

会話の八切りをしたのは自分なので沈黙があるかと思ったが。すぐさまカードを出してきた。


「好きな人…かぁ。…うーん…いないんじゃない?」と、冷静を装いながら返す。


「え〜、じゃ、好きなタイプは?」

「…わかんない。」


その時、彼女は、驚いた顔をしたあと、ケラケラと笑い始めた。


「あはは、わかんないってなに?」


改めて思い返すと、一番最悪な選択肢を取った気がするのだ。


好きな女の子もいないし、好きなタイプもない。まるで好きという興味を失せたような物言いだ。


でも、違う。興味はあるのだ。


でも相手には興味がない人間となったので、こっちから思いを伝えられなくなったし、あっちには”じゃあいいか“と遠慮をもたせてしまう。


嘘つき、嘘に溺れる。とでも言うのだろうか。

自分で勝手に言った嘘に自分で苦しめられている。典型的なバカだ。


ちなみにここで、「いない」と言った理由は他にもあったのだが…。まぁ、改めると関係なかったし、割愛させていただく。


 *


あの時から時間がだいぶ経った。放課後に残る人も増えたし、いろんな人と交流できた。


今日も月が見えて、空が暗闇に染まるまで、残っていた。あの日の2人。まぁ、自分とあの子は家がそれぞれ学校に近いので、歩いて登下校をしていた。


…一緒の方向ではないのだが。


そんなドラマチックなことは起こり得ないのだ。


皆でじゃあねと口にして、それぞれの帰路の方へ赴く。


ふと、振り返ると、そこにはあの子の背中が見えた。今すぐにでも方向転換して走れば間に合うのだが。


そんな勇気はちっとも出てこなかった。


少し目を離した隙に、彼女の小さなその背中はもう見えなくなっていた。


自分は、『まぁ、そんなもんか』と思い込む。


本当は。ただ君と__


 *


月明かりが照らす中、自分は今日吐いた嘘を思い返していた。


そうして、その吐いた嘘を元に、自分の生きていた人生のシナリオを書き換えるのだ。


…もちろん、こんなことする意味はない。けれど、嘘を吐いているのがバレると、なにか、自分の友人というか交流が全て消える気がしたのだ。


…上辺だけ取り繕って交友関係が増えるのなら上々じゃないか?と、そう思ってしまう。


我ながら酷い考えだ。


でも、実際そんなことをしていると、『嘘の自分』と『本当の自分』の差が、どんどん開いていくのだ。


理想との差は指数関数みたいに肥大化していく。


自分の新たなシナリオを考えながら、ふと夜空を見上げる。真っ暗な夜空に光る衛星が一つ。


そこで。


「今日の月は綺麗だな」


と、三日月を見ながら、初めて今日、本心を口にしたのだった。

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