クリスマスデート
時刻は12:00過ぎ。町は白い息と結晶でホワイトアウトしている。
そして僕はとある場所に向かっている。
「あー!やっときた!十分も遅れているー。」
「ごめんごめん」
「次はもうないからね!」
そう、ツンツンしながら言っているのは僕の彼女。
「今日行くとこは覚えてる?」
「…いや覚えてないです」
「…まぁ、いいわ。今日は“あの日”だし。いつもとは違う場所にいきましょう。」
「ええぇ…」
彼女はこの通り、自由気ままだ。まぁ、こういうところに惹かれて告白したんだが。自分とは違って、何にも縛られてない感じが好きだったんだ。
「ここは?」
「来たことはないよね。私一押しの喫茶店よ。寒いし、ここで暖まりましょ。」
そして、その喫茶店に入り、適当な席に座る。
そして、ウェイターらしき人に彼女は“いつもの”を頼んだ。
「この後はどうするんだ?」
「これからは…ショッピングして…夕食食べて、ホテルかな。」
「意外といつも通りだな」
「今日は私が振り回すけどね。」
だって。
暖まったところで、ショッピングモールを目指す。最近の冬はよく冷える。寒がりじゃない彼女があれだけ、寒そうにしているのだ。そりゃ、寒がりの僕はとてもじゃないがここに長時間居れる気がしない。
ショッピングモールは外よりはマシだった。が、さっきの寒さが残って暖まるまでに時間がかかった。
「そういえば何買うの?」
「色々買わなきゃいけないものあるでしょ。これからのこと考えたらさ。」
「…まぁ、そうだな」
そうして、服屋で服を見たり、指輪を売っていた店で指輪を見たり、花屋さんで花を買ったり、旅行の雑誌を流し見して、行きたいところをピックアップしたりした。
夕食の場所に連れられ辿り着いた場所は、すごいお洒落なフランス(?)料理店だった。
食べたのもコース料理で、お金をかけたんだなぁと思った。
「美味しいわね。」
「美味しいね。」
なんて言い合って。
豪華な夕食を食べ終わり、ホテルに向かう。
ホテルの部屋に行き、くつろいだ。
「今日は楽しかったよ。ありがとう。」
「うん。」
「いつもは僕が回る所とか、行く所を決めるけど、君がリードしてくれるのは新鮮だった。」
「…うん。」
「しかも、あんなに高そうな夕食をサプライズしてくれて。お金は大丈夫なの?」
「…。」
するとそこは沈黙を包み込んだ。
それを破ったのは、彼女の啜り泣きだった。
「寂…しい…。」
そこで僕は気づいてしまった。
「また…こんなことを…。こんなことをしても、戻ってこないのに…。」
「なんで!なんであの時…」
「どうして…?」
「どうすればいいの…?」
僕はどうするべきなんだ?
そんなことを考えているのを横目に彩は行動を起こす。
彩は部屋を出て、外に向かう。
そこから、歩いて、歩いて、歩いて…。
歩き続けて。
辿り着いたのは。
僕が一番見たくない場所だった。
「君の最後の場所…。」
嫌な予感がした。
「同じようになれば、同じ道を辿れるのかな…。」
靴を脱ぎ、踵を揃える。
やめて。
靴を壁際に寄せて、持ってきた花を靴の中に入れる。
お願いだから。
同じように手紙を添えておく。
ごめんなさい。
開ける。
謝るから。
淵に立って。
やめて。
一歩を踏み出して。
ごめんなさい…
空を見下ろす。
許して
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