第三話「あなたの温もりが暖かいから」
今日のお仕事も終わって、いつものようにコウの傍で話しかける。
「コウ…」
そっとコウの顔を見ながら、優しく手を握った。
「暖かいな」
「あなたの温もりが暖かいから、今日も生きてる感じがするの」
思わず眠ってる顔を見た後、優しく抱きしめて、おでこにキスをした。
「コウの周りに呪文をかけてるから、大丈夫だよね」
ミラが言う呪文とは、眠ってる人の体が腐らないように、白い花がばら撒かれながら、ほんわかな優しい香りと小さな光が漂ってる事だ。
これは、ミラにしかできない技で、誰もその方法を知らない。
「コウがこうなって、どれくらい泣いてきたのかな?」
ミラは思わず泣いてしまった。
ボロボロと涙が溢れ出しながら、婚約者のコウに話しかける声がとても脆くて弱く聞こえてくる。
そんな悲しい雰囲気になりながらも、自分は強くなりたいと思った。
「私、大丈夫だから」
「ミラ…」
優しくて小さな声が聞こえるようだ。
「もしかして、コウなの?」
「ずっと待たせてごめんな」
「ううん、これが夢でも大丈夫だから」
「強くて、優しい光を持つ魂なんだね」
「そうだな」
コウは後ろから優しく包み込むようにミラを抱きしめた。
それが覚めない夢ならいい。
「少しヒントをあげてもいい?」
「何?どうしたの?」
「私ね、みんなにこう言われてるの。」
『彼女は花びらと魔法を利用して、過去と未来の時間の流れを占いします。
主に、長年眠っているけど、深く愛してる彼を救うためです』
「これらの言葉はただの言い伝えだ。
だけど、花びらの占い師のミラにとってすごく大切な時間だ。
そして、何より事実だ。
花びらの占い師のミラの髪はサラサラして、キラキラしてる金色だ。
そして、透き通った水色の瞳を持ってる。
何より彼女のシンボルとなるのは、この白くて長いベールとピンク色の大きな花だ。ある魔法で花は枯れない。いや、花は枯れてはいけないのだ。そして、ピンク色の真珠を巻いて占いする事がとても魅力的だ。
まだミラには忘れられなかった。
長年眠ってる彼を救うために、花びらと魔法を利用して、自分の能力を犠牲にする。…ってね」
「ごめんな、僕のせいだろ?」
「ううん、コウは悪くないよ」
「…全部、私のせいだから」
「泣かないでくれ」
「このまま夢の中でもいたいの」
「あまり無理するな」
「ミラの髪に飾る大きなピンク色の花がとてもきれいだ。まるで君の魔法が花咲くように」
「ありがとう」
「僕は信じてるよ。ミラなら、きっと自分の魔法で、人々に新しい道を導き出してくれるって」
「ごめんね!ごめんね!コウ!」
「だから、これからもミラを見守るから」
「君なら、きっと自分の魔法で幸せにしていけるよ。そう信じてる」
「コウのおかげで、また明日のお仕事も頑張れる気がするよ。
優しくて、幸せな夢を見させてくれてありがとう」
「ミラ、愛してる」
「私も愛してます」
優しくて、温かいキスをする。
それが二人にとって大切な瞬間なのだ。
「また会いに来るから、ちょっと待っててくれ」
「どうしたの?」
「実は、魔物に自分の魂を預けられてるんだ。
今から5年前、ある魔物に僕が婚約してる相手が花びらの占い師だって知った時に、なぜか僕の魂自体が監禁されてしまったんだ。
その時から僕は深く眠っている。決して外に出られないように。
その時から魂だけ体になかなか入れなくて、まるで強くて、悪そうな何かの術式が邪魔をしてるような気がしてるんだ」
「僕も5年間諦めた事はない。
だけど、ミラの泣き顔を見る度に心が痛くなるのに、何もできないのが悔しい」
シワを寄せながら話しかけるコウの魂はどこか寂しそうだった。
「コウ、ありがとう。これでようやく分かった気がする」
「5年間も待たせてごめんな」
「ちょっと寂しいけど、また明日も頑張れるから」
「ずっと待っててくれてありがとう」
思わずミラは泣いてしまった。
ボロボロと涙を流しながら、体が震える程、心がだんだん弱くなってるようだ。
「ううっ…!!」
頭を撫でて、優しく抱きしめたい。
相手の顔に触れて、手を握りたい。
そっと抱きしめたい。キスをしたい。
こんなに近くにいるのに、遠く離れてる気がする。
この呪文が解ける方法はミラ自身しか知らない事だ。
ミラにとって、すごく特別で、大事な術式でもある。
ミラはこう思ってる。
もし5年前、私がコウと婚約しなかったら、こんな事にならなかったはずだ。
私は深く愛してる彼の自由を奪ってしまった。
未だにこんな弱い自分が許せない。
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