第二話「聞こえる優しい声」

コウが目を覚めなくて5年が経とうとしてる。

二人が婚約したのは16歳の時だった。

それから、ミラはあらゆる方法を使って、深く愛してる彼が目が覚めるように試してきた。だけど、結果はどれも失敗になってしまった。

ミラには分からなかった。

どうしてコウは深い眠りについたのか。

この5年間、ずっと諦めなかった。

そう簡単に諦めてはいけなかった。

それくらい二人の愛情を育つように一緒に成長してきたから。

例え、最終的に自分の命を引き換える事になったとしても、コウを諦めたくない。

コウは、世界で一番大好きで大切な存在だから。

「絶対に死なせないから」


久々に幸せな夢を見る。

コウが元気に動いて、自分に話しかけるように。

優しい春風に吹かれながら、二人は草原の中で寄り添う。

「ミラ。ごめんな」

「ううん、大丈夫だよ」

「本当に?」

「…うん」

「毎日、ミラが泣いてるのは知ってるよ。僕のために」

「生きて。お願い」

「ちゃんと生きるよ。この先、ミラと幸せになりたい。

だから、一緒に頑張ろう?」

「うん、そうだね」

「僕はずっとミラの事を愛してるから。誰よりも」

「ごめん。もう少し待っててくれ」

「平気だよ。いつまでも待つよ?」

「なら、この指輪を受け取ってくれ。僕の婚約者として」

「ありがとう。嬉しい」

それは銀色のダイヤモンドが嵌めてる指輪だった。

「きれいだよ、本当に」


優しい夢が終わる。コウが消えてしまう。

「コウ…コウ…」

「嫌だ!消えないで!」

目が覚めて、ようやく泣いてる事に気がついた。

「ミラなら、きっと大丈夫だよ」

夢の終わりはその一言だけだった。

優しくて、暖かい夢。

久々にこんな気持ちになれた。

この先、コウのためにも、もっと頑張ろう。

そう思うミラだった。

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