桜が見守る最後の日、あなたと過ごした日々を思いながら...

今日が最後の日。もうあなたと机を並べて話すことも、休み時間に馬鹿話することもなくなる。教室に行けば、毎日あなたの姿が見られたのも今日で終わりだ。


結局私は、あなたに何も伝えることができなかった。放課後にいつも寄り道するあのファミレス、文化祭の時にロミオとジュリエットのコスプレで盛り上がった時に握った手、バイバイした後の後ろ姿。


あなたと過ごした時間は、決して少なくなかった。むしろ、あなたが隣にいることが当たり前で、この時間が永遠に続くんだと思っていた。


今日が最後の日だと、もう何日も前から知っていたのに。それでも私は、あなたといつものようにたわいもない時間を過ごしていた。


卒業式の今日でさえ、また明日が訪れるかのように澄ました顔で別れてしまった。もう、あなたと会うことはないのだろう。この教室とも今日でお別れだ。


ああ、いつまで待っていたってあなたは戻ってこないんだ。笑顔で「ファミレス行こうぜ!」とは言ってくれない。


「そろそろ帰らないと」


この教室は、もう私たちのものではない。だからこそ、中々離れられずにいた。だけど、いつまでこの場所にすがっていても、私の場所でなくなったことに変わりはない。


「帰ろう」


踏ん切りがついた。来月には、それぞれの道を歩み出す。すっかり暗くなってしまった学校は、私の悲しみも闇の中に隠してくれそうだ。もう戻ることのない場所。桜の木だけが、私たちの門出を祝福してくれている。


蕾ができて、少し花びらが出ているものもある。桜の木...。


「やっと出てきたかー。もう、またくたびれたぜ!ファミレス行こうぜ」


「えっ」


もう見ることがないと思っていた笑顔。なぜ、あなたがここにいるのか。マフラーを巻いて寒そうに手を合わせる彼。


「私、あなたに言わなきゃいけないことがあるの」


いつもの笑顔で次の言葉を持つあなた。この笑顔が失ってしまわないか、この笑顔を困らせてしまわないか。


怖い。


「あなたと過ごした時間、すっごくすっごく楽しかった!いつも私に優しくしてくれて、あなたの笑顔を見ているだけで私は嬉しくて。だから、今日でさよならしたくないの。私、あなたのことがずっと、ずっと前から、好きなの!」


お腹の中から声が溢れた。もう、今日が最後の日なのだ。もう、あなたと会うこともないのだ。だから、私の魂の叫び。


あなたは、私の言葉を聞いて、ただただじっと黙っていた。何を考えているのか、断る言葉を考えているのか。


一歩、また一歩と距離が縮まっていく。あなたの表情はよく見えるのに、あなたの感情は何も見えない。


でも、何があってもいい。だって、最後の日にやっと、言えたのだから。

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