空想の世界

小説が書けなくなって、もう1年が経とうとしている。空想の世界に浸ることだけが私の生き甲斐だったのに、それすらもしていない。


抜け殻のようにただ毎日を過ごす日々。1日が終わる度に、時間を無駄にしたような気分になる。


「ずっと空想の世界で生きられたら...」


そんな呟きをして、私は眠りに落ちた。


目が覚めると、目の前にはいつぞや私が夢見たお城が立っていた。これはまぎれもなく、私が学生時代に毎日妄想していたお城だ。


私はここでお姫様のような生活を送り、優しい執事とメイドに囲まれ、格好いい王子様と出会う。


女の子ならば誰もが考える空想物語。ありきたりだけど、この世界に浸っている時はとても幸せだった。


もしやと淡い期待を抱き、私はお城の扉を開ける。中にはメイドが並び、その先からは執事が出てきて私を迎え入れる。部屋には王子様が待ち構えていて、格好いい爽やかな笑顔を私に向けた。


空想の世界とまったく同じ光景。


優しい王子様と過ごす時間は、これまでつまらなかった1年間全ての記憶を飛ばしてくれる。幸せすぎて、溶けてしまいそうだ。


私は執事に見守られながら、ふかふかのお姫様ベットで眠りについた。



太陽の光が眩しく私の視界を照らす。もう少し眠っていたいのに、今日が始まってしまった。毎日がつまらない日々。あれだけ好きだった小説も、もう1年も書いていない。子供の頃は空想の世界に浸るのが大好きだったのに、それさえしていない。今日も私は、つまらない日々を過ごそう。

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