第47話

(ミロットッ! 大丈夫だったか!)


 黒マントがぶっ飛ばされた隙をついて俺はミロットに思念を送る、ミロット曰くこの思念の魔法は片方が使えば使われた方も返信が出来るらしいのでその言葉を信じてみた。


(助かった、ヤツはかなりの使い手だからな。下手に刺激してアトリエで暴れられたくなかったんだ……それはそれとしてお前、アトリエの床を使って蛇のゴーレムを……)


(………………)


(オイッ! 聞いてるのか!? ……まったく)


 ミロットは返事を聞き、余計なツッコミは無視した。俺が無言を決め込むとミロットは渋々動き出す。


  ミロットが黒マントを拘束するために何かの魔法 発動した。


「マジックバインド!」


「くっなめるな!」


 黒マントのヤツ、気が付きやがった、ヤツが雄叫びをあげる、するとミロットの発動した魔法がかき 消えた。


(マジでかっ!?)


「魔法を消滅させただとっ!?」


「……あれはディスペルハウル? まさかあの子って……」


  驚愕する俺とミロット、しかしプライムは奴の妙な力を見て何かその力や黒マントの正体に心当たりがあるようだった。


 それについて質問したいところは山々だが今はこの黒マントを何とかするのが先だ、俺はバイラスゴーレムに黒マウントの無力化を指示する。

 バイラスゴーレムがタコ足を唸らせ黒マントに攻撃を仕掛ける。


 ダメージを受けた黒マントの動きが鈍い、これで決められると思った。


「このゴーレムは本当に何者が操っているんだ、厄介過ぎる……だがっ!」


 しかし黒マントの体に妙な光がまとわりついたのが見えた、やつが何も持っていない両手をそれぞれ 振るうとバイラスのタコ足が切り飛ばされた。

 いつぞや本物のバイラスの巨大なタコ足を切り裂いた攻撃かあれは。


「先ずはこのゴーレムを処分する、覚悟しろっ!」


 まずい、あんなものを手当たり次第に放たれれば ミロットたちもこのアトリエも消えてなくなってしまうかもしれない。


(ミロット、プライム! 流石に本気でやり合うと危険だから今すぐ逃げろ!)


(なっ私のアトリエをどうするつもりだ!)


(言ってる場合かっ!?)


「ちゃんと僕も運んでねミロット」


 2人に避難を指示すると同時に俺はスネークゴーレムにも指示を出す、やつは今バイラスゴーレム をどうにかするのに集中している。


 実際に大きさも見た目も普通に蛇の姿をスネークゴーレムにはまだ気づいていないと思ったからだ。


 さらにゴーレムを追加でクリエイトするれば確実に倒せると思うが……これ以上ゴーレムクリエイトする場合ミロットのアトリエをゴーレムの素材をとして使うと今度こそミロットがブチ切れる可能性がある。


 ケチな褐色おっぱいめ……仕方ないのでバイラス ゴーレムとスネークゴーレムでどうにかするしかない。


「本気で相手をしてやる、わたしからすればそのランプの中のスライムさえ生きていれば後はどうでも良いと言うこと忘れるなよ?」


 黒マントが何やら物騒なことを言いながら両手を振るおうとしてくる。

 邪魔だからって消えてやるほど俺のゴーレムは甘くないんだよバイラスゴーレムを前に出して スネークゴーレムでもう1回落とし穴に叩き落としてやる。


 俺の指示する通りゴーレムたちは黒マントに攻撃を仕掛けた。黒マントが謎の攻撃でバイラスゴーレムのタコ足をスパスパしまくる。人のゴーレムを……おのれ~~。


 その時ゴーレムに集中していた黒マントに対しミロットがさらなる魔法発動した。

 ミロットは片手を前に出す、その前にピンク色の魔法陣が形成された。


「人を空気扱いするな!」


「不意を突いたつもりか、甘いんだ……っ!?」


 残念でした。スネークゴーレムに片方の足だけすっぽり入る落とし穴をお前の足元に無数に出現させてやったぜ。


「私のアトリエで暴れるな愚か者共がああああっ!」


 まさかその愚か者共の中に俺も入ってる?


 怒りの雄叫びを上げるミロットの魔法陣からピンク色のビームが発射された、ビームは黒マントに直撃する。

 すると黒マントが何やらうめき声をあげた。


「ぐうっ!? なっなんだこの魔法は……視界が歪む……あっ足がふらついて……」


 謎の魔法について俺が質問をするとミロットじゃなくてなぜかプライムが答えてくれた。


「ふっこの魔法は…」


「あれは1種の幻覚魔法だね、視界が歪んで足元が心許なくなる感覚を味合わせる魔法……多分相手を酔っぱらわせた状態にする魔法だと思うよ」


「……酩酊魔法、グロッキーシアだ」


 ほうっなるほどね、お酒もなしに相手を酩酊状態にする魔法か。

 ゲームみたいに混乱させるだとかバーサーカーにするとかじゃないんだな。


 はっきり言って強制的に酔っ払わせられるのもかなり凶悪なステータスデバフだと思うね、俺はあんな魔法くらいたくねぇわ。


 元からお酒を飲んで酔うと完璧に覚えてる事と綺麗さっぱり忘れてしまう部分が出て来てしまうタイプの人間だからさ、自分が酔ったらどうなるかとか俺自身いまいち分からん。


 黒マントはあまり酒を飲んだことはないのだろう 自分が酩酊状態だというのに無理をして立ち回ろうとして転んだ。


 これならミロットたちに任せておいてもどうとでもしてくれるだろうな。


「こっこんな魔法で……おのれ!」


「貴様が何者なのか、全て白状してもらうぞ」


「………断らせてもらう」


 黒マントのヤツは最後の力を振り絞ってあのテレポートみたいな魔法を使って逃げた。


「逃げた!? 散在アトリエを破壊しておいて謝罪も無しだとっ……許せんぞクソマント!」


「まあ落ち着け、あんなのがいきなり押し掛けてきて怪我とかないだけマシだろう」


「そうそうっまさかあんなのがこの時代にまだ居たなんて驚きだよ~~」


 アトリエ破壊されてプリプリ怒っているミロットをなだめるプライムと俺。

 何はともかくこれでアトリエの方の問題は片付いた、次は……。


「随分とぼ~っとしてるじゃない? 戦いの最中にさあ!」


 あっやべ、ゴーレムたちがいつの間にか全滅していた。サキュバスコスになったリカラが既に目の前に仁王立ちしているぞちくしょう。

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