第37話
当たり前の話だが、怪しい2人組がリザードマンたちと手を組んでこのフレッゾの町を滅ぼそうとしてますよ、なんて話を街の人間や冒険者に言っても まず相手にはされないだろう。
ならばどうするかを考える、まず俺が採取依頼を受けて荒野に出る、そしてある程度時間を置いて偶然を装った体で妙なリザードマンを発見したとでもギルドに報告するのだ。
怪しい2人組については今のところ伏せておこう、うまく説明できる自信がないからな。
更には魔族とか言ってたし、下手するとリザードマン以上に厄介なモンスターだったりする可能性もあるからな、やぶ蛇は勘弁だ。
まずはリザードマンについての対応を優先させてもらおう、というわけで翌日の朝早くから俺は冒険ギルドに行きすでに何度も受けた
……昨日は寝たよ、だってお腹いっぱいだったし。
余談だが近頃は俺が安定して採取をしてくるからなのか1匹あたりの取引の値段が下がったのだ。
需要と供給はわかるがそれなりに見つけるのが大変なので最近は別の採取依頼で食っていけないか思案している俺だ。
何度も採取依頼を受けているのですっかり顔見知りとなった受付のお姉さんと話をする。
「またこの採取依頼をお願いします」
「分かりました、ラディアちゃんは依頼の成功率も 100%だし、すっかり信頼できる冒険者になったよね」
「……おだてられても何も出ませんよ」
一応、冒険ギルドでは未だに猫をかぶっている。当たり前だが俺が素の状態で誰も彼にも接すれば、基本的によくは思われないだろう。
自身の言葉遣いもそうだが基本的に他人への気遣いというものが足りないからな俺は、もちろんだからなんだこちとらゴーレム関係のチートスキル持ちだぞおらっ! という思いも持っているのだが。
冒険者ギルドで依頼を受けた俺は フレッゾの街の 門から外に出る、そのまま荒野に行こうとするといつぞや会話をした優男が俺に声をかけてきた。
「よっ元気にしてたか? まさか本当にエルフの子供がこの街で冒険者になったんだな~」
「はいっ少し大変な時もありましたけど」
「はははっそうかそうかっ! 少しは冒険者稼業にもなれたか?」
「まあぼちぼちですね、いつもは採取依頼しか受けません」
「お前にモンスターの討伐っていう方が無茶な話だろ、むしろそんな依頼を回すって言われたらはっきり断れよ。場合によっちゃ兵士に話せ、違法な仕事の斡旋は俺達が介入してでも止めてやるぜ」
「はいっ分かりました。 その時は頼りにさせてもらいます」
この優男とは最初にフレッゾに来た時に話して以来だったが普通にいい奴だ。だが向こうから話しかけくるなんて俺に用でもあるのだろうか?
「それとっ少し小耳に挟んだんだが…」
「何をですか?」
優男が少し真面目な表情になって話をする。
「近頃この辺りでリザードマンの活動が活発化しているらしい、それと冒険者たちの間で噂になっているかなり戦闘力の高いモンスターの未確認情報がある、念のため頭に入れておいた方がいいぞ」
なるほど、その情報を教える為に俺に話しかけてきたのか。何というか善人な優男ですな、きっと女性にモテるの違いない、そこそこイケメンだしな。
「分かりました、もし危険そうなリザードマンを見つけたらすに帰ってくるよう心がけます」
「そうしてくれ、冒険者ってやつは命がけの仕事だが……やっぱり元気に出て行ったやつが帰ってこないなると俺も町の人間もそうだし冒険者ギルドの受付の子たちも悲しむってもんさ」
ギルドの受付の子? この優男、冒険者ギルドの受付嬢に知り合いでもいるんだろうか。
まあ気をつけると言われるまでもなく安全マージンの確保には余念はないつもりだ。
改めて気を引き締めて俺は荒野に向かって出発した。
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