第19話
ミロットから受けた依頼の内容は簡単だった。
このフレッゾの町の近くには住民の生活水を確保するためにちょくちょく利用する川が一本通っている。
その川の上流にある湖、そこに自生する薬草が欲しいというわけだ。
問題は先程からミロットが何度か言っているバイラスと呼ばれる巨大な猿のモンスターである。
このバイラスと言うモンスターがとにかく強いことで有名らしく、昔は実力に自信のある冒険者パーティーは何人も挑み返り討ちになっているらしい。
今ではそんな冒険者もいなくなり、基本的にその湖関係の依頼はみんな断るのがフレッゾの町の冒険者の常識だそうだ。
ミロットもそんな危険なモンスターに挑むつもりはないとのこと。
無論俺のゴーレムならやってやれないことはないのかもしれない、だがそんなことをしたところで無駄に目立つだけだ。
世の中っていうのは出る杭は打たれるものである、俺は他人との
ゆえに下手に目立つような力技はせずにこのミロットの言う薬草の採取だけに重点を置いた行動を心がけようと思っている。
ミロットも薬草以外には興味はないようで基本的にモンスターとの戦闘は避ける方針だそうだ、そんな感じで話はまとまり、早速その湖へと俺たちは向かった。
◇◇◇◇◇◇
「湖に行くんなら川から上流へ向かった方が確実で道に迷わないんじゃないですか?」
「あの川は確かに生活費を得るために日に何度もフレッゾの人間が向かうが、本来はサゴンを始め厄介なモンスターが多い危険な場所だ、戦闘を避けるというのならあそこ川の近くを行くことはよした方がいいだろう」
ミロットによるとあそこくらいしかこの辺りじゃ 水場がないらしく、リザードマンをはじめ荒野に住むモンスターもあの川の近くに度々現れるそうだ。
フレッゾの町の人々は水を汲み上げに行くときも何人も冒険者を護衛に雇って日々の生活水を得ているらしい。上空のロックコンドルもそうだし、この世界は人間が生きるには厳しい世界だ。
確かにモンスターの戦闘を避けるのなら川の近くは通らない方がいいだろう。
そしてミロットの頭の中の地図だけを頼りに荒野から直接その湖へと向かう俺たちだ。
移動することをしばらく、ミロットは俺と違い頭の中の地図がちゃんと機能しているらしい、問題なく湖に着くことができた。
湖を遠目で確認でき、また距離があるうちに コンドルゴーレムを1体飛ばして湖の方の様子を見てみる、ダムとかと違い自然にできた楕円形のかなり規模の大きい湖だな。
「あのゴーレムに様子を見てきてもらいます」
「空を飛べるゴーレムか、便利なものだな。しかしあのゴーレムと意思疎通でもしてるのか?」
「いえっワタシはゴーレムと視界の共有が出来るんです」
「そんなことが出来るのかゴーレム魔法は…」
この荒野は緑が少ないが湖の近くはモリモリと草が生い茂っている、その草にコソコソ隠れるように 何体かモンスターの姿も確認できた。
下手に湖の近くでいるとバイラスのタコ足の襲われ湖に引きずり込まれるから隠れているのだろう、以前魚ゴーレムと視界を共有した時に見た光景が思い出される。
湖の中にいたバイラスは何度思い出しても超怖い、あんなヤツは絶対に戦いたくないもんだ。
そんなことを思いながら俺はミロットと共に湖へと向かって歩いていた。
そして湖がある程度近づくとミロットが俺に話をする。
「よしこの辺りから魔法で私たちは姿を消そう、お前は可能なら更にゴーレム魔法を使って可能な限りのゴーレムを召喚してくれ」
可能な限りってこの湖を俺のゴーレムで埋め尽くせとでも?
多分1体か2体くらいしか出せないと思ってるなこの褐色女子は。
「ゴーレムで一体何をするんですか? 姿を隠すのなら問題ないのでは?」
「これはまあ念のためだな、万が一は私の魔法が見破られた時のための盾あるいは囮として頑張ってもらうつもりだ、もし魔法が見破られなければ出番はないさ」
相変わらず俺のゴーレムを盾だの囮だのと失礼なヤツである、もしこいつが美人に巨乳でなければ俺は文句の一つも言っていただう。
まあ依頼人の意向である、渋々俺はそれに従った。
「ゴーレムクリエイト」
生み出したゴーレムはリザードマンメイジのゴーレムである、いざという時には火の魔法が使えるリザードマンの方がいいと考えたからのチョイスだ。
「リザードマンの姿をしたゴーレムか、変わったゴーレムを使うんだなエルフというのは」
「別にエルフが関係してるとは思いませんけど、結構頼りになるゴーレムたちですよ」
ミロットがブツブツと呪文を唱え魔法発動する、俺たちとゴーレムたちの周りに膜のようなものが貼られるのが一瞬見えた。
「よし無事に魔法も発動した。それでは薬草探しに向かうぞ」
「わかりました」
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