2. 入学式


 「入学式暇だったねー」


 あっけらかんと言う彼女に,思わず表情が強張る。


「せ,先生いるから!」


「え? 良いじゃん本当のことなんだし」


 んーっ,と伸びをして,緊張感のない表情で私を見つめる。


「本当に同じクラスなんだね,嬉しい」


「え? うん。そうだね」


 柔らかく笑った彼女に,私は疑問符を浮かべつつ返す。

 まだ私の何も知らないくせに,何を言っているんだろう。おとなしくて絡みやすいと思われたのかな?


「こらー,時間だ。席に着けー」


 入学式で発表されていた担任が声を上げる。穏やかそうなおじいちゃんだ。私たちの話していた内容は,どうやら耳に入っていないらしい。


「配布物が山のようにあるからなー,ちょっと手伝ってくれないか?」


 痛そうな腰を屈め,おじいちゃん先生がプリントをどさっと教卓に置く。

 様子を見て数人が,手伝いに席を立つ。


 窓の外は,変わらず桜が降っている。

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