8.その後のお世継ぎ

1年後でも公主の様子は変わらない。

母親は憑依をしたまま。それでも王女候補は自分しかいない。


祈祷の人たちが祈ってくれている間は母と意思疎通ができる。

「なぜ離れない?」

「あなたを苦しめるため」

「父を呪えばいいものを」

「あの人を困らせたいの」

毎回このやり取りでは進まない。


今日も祈祷の時間を終えて、

祈祷室から執務室へと移動する。

上がってくる書類の決裁をする。

もっとも最終的な結論としての印なので押していくだけではあるのだが、権力を伴っていることを自覚しているか否かで、責任感も変わってくるものだ。

「疲れるわ」

気を抜くと(愛して)と言葉が出てしまう。

憑依は進行性のものなのか、若干体の自由が利かない時が増えた。


いい加減に呪いを解いてほしいと思うのだが、そう簡単ではない。

憑依されているのを解除するカギは何なのか。

原因究明に働いてくれる人はあまりいない。

(先帝を含めて子孫を呪いに来ているとしか思えない)

懐妊の話も聞こえてこない。

仕方ないから宰相補佐のミミについてもらっている。女性だが、かわいらしくて博識だ。女性を選んだのは最悪替え玉もできるからだ。

重要な式典で暴れることもあるかもしれない。

それに目に見えないものの類は先帝がほとんどすべて捨ててしまったので資料も残ってはない。

もう1年ご懐妊の知らせがなければ、傍系の中からだれか候補を探し、法改正をして告げるようにしないといけない。

権威が損なわれるからおいそれと命令を覆すのはためらわれる。

このまま硬直状態ならそれもやむなしだと思っている。

はじめて朝議で発言したのだが思いのほか反対の声が多い。血統に関するこだわりがい大きいのと先代までかなり有能で、反乱や侵略など内政も外交も問題なかったから賢君が続くと思われているらしい。

そんなことないのに。

食料の値崩れなどはないように小麦の流通はどうなるか動向を観察しているし、他の国の歴史や内政、これからの発展についても書物や伝聞を調べて、把握するように心がけているが、それでも万全というわけではない。

所詮、人間のすることだ。

見逃しも間違いもある。

自分の血統に崇拝に似た感情が見えるたびに危うさを感じる。

「もし、期待に沿えなかったら動乱の時代が来るかもしれないな」

それを恐れている。

代わりになれる血縁は必要だったし、私自身の結婚についてもそうだ。

王女の結婚は国民の関心をひいてる。

庶民の間で流通している一番大きな新聞とて騒いでいる。

結婚するのはどのような方なのかと。

やめてもらいたいが、関心をそのままにしておくのも心苦しい。

舞踏会に参加して、婿を見つけてこないといけないようだ。







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