6.除霊者探しと祈祷師
父を呪いたいかもしれない。
がんじがらめの道を作ったことに対しても。
母が身罷った後、すぐに別の女を簡単に妻に迎えたことにも。
人格全部を乗っ取られるのかと思ったが、まだ左腕のみだ。
これから人格全部乗っ取られるのか、はたまた突然死んでしまうのか。
素人には判断がつかない。
「わた、し、だけ、あい、して」
半分だけ動く唇も午前と午後の決まった時間に愛してとつぶやくくらいだ。
日中は銀のスプーンを持っているだけで特に悪さはないらしい。
これらは3日間自室に閉じこもって得た結果だ。
陛下に会ったらどうなのだろう?
暴れるのか、どうなのか。
私は窓から外を見ていた。
窓に行くのも一苦労。
ここからは廊下が見える。
まだ変化はない。
「私から、は、永遠に、逃げられない」
父親は私が母に浸食されていくのを耐えられるのだろうか?
いいえ、耐えられまい。
唯一の後継者となっているのだからあまりひどいことにはならないだろう。
王女候補は自分しかいない。いつまでも熱が出たという言い訳も苦しい。
母が最後まで信用していた侍女に王に話すように要請した。
正直に自分が呪われていると王に告げてもらう。
侍女が王にどうするのか話してくれるはずだ。
体が重い。
ずるする、裾を引きずって歩いてく。
やっとのことでベッドにたどり着いた。
指先を動かすこともつらい。
いまだ王は面会に来ない。
☆☆
「このような状態になっております。どうされますか?」
「面会したら、私が呪われるのではないか?」
「確証はございません」
侍女は正直に言うしかなった。
「しばし待て」
王は何回目かわからない答えを告げる。
「困ったわ。王は恐れて面会もしてくださらないし、解決策もご提案してくださらないし」
何回目かの往復で私は提案する。
「しょうがないから国一有名の祈祷師、霊媒師を探してもらえませんか?」
王は国一番の祈祷師と名高い女を連れてきた。
自分は宮には入らず、側に車を止めさせて従者たちに逐一報告させる。
やってきた祈祷師は左半身に寄り添い、語り掛ける。
「あなたは亡くなったのです。ご自分の子孫を苦しめないでいただきたい」
「だ、め」
祈祷師が説得してもいやとだめを発するばかり。
「あ、い、し、て」
体の力を抜くとこぼれ出る言葉。
母が欲しかった言葉なのだろう。
☆☆
王の前で、報告される。
「これは時間とともに薄れていくものなのでしょうか?」
「――わかりかねます」
「それでは困る。ほかに打つ手はないのか」
「わたくしたち祈祷師の手でできることは致しました。これからも祈祷は継続しますが……ほかに可能性のあるのは除霊師になるかと」
「祈祷に除霊か。どんどん怪しくなるな」
王は頭を抱える。
「テリーゼ、なぜ大切な娘にこのようなことをしたのだ?」
ため息をついても仕方ない。王に求められるのは決断だ。
「とにかく今度は国一番の除霊師を連れてくることにする。祈祷の類も継続するように」
「かしこまりまして」
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