第5話 もうどうにでもなっちゃえ!
和哉は夢を見た。
夢の中で待ち合わせの駅に向かう。
いや、
向かわなかった。
(俺は最低だ)
(俺は最低だから敢えて最低をやってやる)
(今頃ナツキは駅のホームで佇んでいるはずだ)
(ざまあみろナツキ)
ナツキは和哉との約束を守って駅で待っている。
彼女の姿は果たして美少女なのか?それともアメーバ状なのか?
それはわからないしどうでもいい。
だけど間違いなく駅で待っているだろう。
そりゃそうだ。「それがナツキだということになっているから」だ。
しかし和哉の中に不意に怒りの感情がこみ上げてきた。
(クソッ!どうして・・・
ナツキはどこまで俺にコントロールされて生きていくんだよ!)
そして和哉は気づいた。
和哉が本当に望んだナツキは「和哉が制御できないナツキ」だってことに。
でもここは和哉の妄想世界だ。
和哉の想像を越えたナツキは存在することができない。
しかしナツキが存在できるのは、この妄想世界があるからこそなのだ。
じゃあどうすればいいんだ?
じゃあ・・・
(消えるべきは・・・俺なのか?)
(俺の居ない世界に生きるナツキ?)
(俺が本当に会いたかったのはそんなナツキなのか?)
突然強く白い光があたりを覆う。
意識が明瞭になる。
和哉はすくっとベッドから体を起こす。
当然ナツキなどという存在はそこにはない。
ザクッ
カーテンを開ける。
わざと音を立てて。
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