第7話 第一村人討伐!そして交流
ドドドスウウウウウンンンン~~~~という音で時間が動き出した。
ひげもじゃの斧が自分の前髪をかすって足下に突き刺さっている…いや、前髪無いんですけど…っていうか髪自体ないんですけどね(悲)。なんて余裕ぶっこいてる場合じゃなかった。すっかり忘れてた、この状況。
「な…どうやってオラの斧をかわしただ!」
おっ本当に日本語に聞こえる。初めてミチ、ミカに感謝。
「このハゲジジイが~~~、オラを侮辱するのは許さんど~~~!」
ひげもじゃが突き刺さった斧を振り上げる。本当に当たったらシャレにならん。
とっさに、重力変換50%を心の中で唱えて、前方にすばやくダッシュ。がら空きのみぞおちめがけで軽くパンチ。よかった…本当に使えた。ミチ、ミカに2度目の感謝。
「ぐぼぼおおおおお~~ばあ~~」
ジャスミーーートみぞおち。ひげもじゃが口から体液やらなんらやを噴射させて5mぐらいふっ飛んでピクピクと痙攣してる。近寄ると口から泡を吹いて白目をむいていた。どうやら気絶しているようだ。こんなマンガみたいな顔初めて見た。
俺はひげもじゃの両足を持って、近くの茂みまでひきずっていき、ハンマー投げのように森へ投げ入れた。回転しながら、何度も何度もはずんで8mぐらい先に着地した。途中ゲフンゲフン聞こえたが多分大丈夫だろう、聞かなかった事にする。
やりすぎたかなとも思ったが、ひげもじゃ自身が平気で人に斧を振り下ろすような無頼漢だからこそ、わしは容赦はしなかった。自業自得だ。
茂みから離れ、埃をはらっていると後ろから声をかけられた。
「あの…助けて頂いてありがとうございました。」
さっき後ろにいた美人なお姉さんと2人の子どもが揃って頭を下げる。
えっそうなの? 身にふりかかる火の粉をはらっただけなんだけど…どういう状況だったのか分からないが、この3人も襲われていたのか? だが、ここは知ったかぶりで
「年寄りのおせっかいだったかのう? 大丈夫かい。」
中身は20歳だが外見は老人なのでしゃべる時、年配風に気をつける。
2人の子どものうち男の子が目をキラキラしてわしをみている。よくみると美人のお姉さんもキラキラしてる…なに?もしかして福○雅治知ってるの? サイン欲しいの?
「おじいちゃん仙人なのか。仙人でしょ。仙人に違いないよね!」
なにその思い込み…この子恐い。
「こらレイク失礼でしょう。すみませんお気を悪くなさらずに。あの…不躾ですがオカタ山の仙人様でしょうか?伝聞によるお姿と非常に似てらっしゃるので…。あっ申し遅れました私の名はセイムでこの男の子はレイク、女の子はリイナです」
えっ何その設定、仙人ってなに?っていうか、わしはこの世界の現状どころか右も左もわからない、単なる迷い爺なんだけど…。よし! 長期連載には付きものの記憶を失っている体でいこう。
「うむ、わしの名前はジューローじゃ。実はさっき地面に打ちつけられた影響なのか記憶があいまいでのう、どうして天から降ってきたのか、自分が何者なのか思い出せないのじゃよ。名前だけは覚えておるんじゃけどな…。」
「そうでしたか…それでしたら私達の村に一緒に来ませんか?何もない村ですが、ジューロー様を出来る限り、おもてなしさせていただきます。」
「ナイスお姉ちゃん!仙人さま、うちに泊まってくれよ!」
ふむ、確かにその提案は非常にありがたい。その滞在中にこの世界の情報を少しでも教えてもらって、覚えるのに好都合だ。しかし、知らない人にほいほい付いていっていいものかな…。
〈センニンサマ、イッショニイコウ〉
んっ振り向いても誰もいない? 確かに後ろの方から聞こえたきがしたのだが…。そんなわしをいぶかしげにみるレイクとセイム。リイナはこっちを見て笑ってる。
この娘は…
「あっ実はリイナは口がきけないのです。しゃべれないのか、しゃべらないのかはわからないのですが、今まで声を出したことがないのです。」
わしの表情を察したセイムさんが教えてくれる。しかしさっきの声は少女の声、この娘ではないのか。
〈リイナダヨ。ワタシノコエハ、センニンサマダケニキコエテルノ〉
「がび~~~ん」
わしは驚いた顔で大声で叫んだ!
突然の大声に、思いっきりレイクとセイムは引いていたが、そんなことはおかまいなしに、わし驚いた。目をひんむいて驚いてリイナを凝視した。
ジジイショック! ジューローショックよ!
リイナの声?が頭に聴こえてくるんだ。これが念というものなんだろうか。詳しくはわからないが…。
〈ミンナニハワタシノコエ、キコエナイノ。センニンサマガハジメテヨ〉
みんなには聴こえていない。わしにしか聞こえないって事はわしにも念が使えるのだろうか? よし!わしにできるかわからないが、頭の中でリイナに向かって念じてみる!
〈ワレワレハ、ウチュウジンダ〉
〈ウチュウジンッテナニ?〉
すご~~い通じた~~~! 初めてで通じるってわしすごくない。すごいよね、わし!と優越感にひたってるとレイクが
「なあ仙人さま、ウチュウジンって何?」
……………念じたつもりが口に出てた。
恥ずかしい~~~~セイムさんにボケ老人だと思われる~~~~~。
「お言葉に甘えてお世話になろうかのう。セイムさんよろしく。レイクくんとリイナちゃんもな。」
無かった事にしてやったぜ~~~! ウチュウジンのくだり、なかったことにしてやったぜ~。
「こちらこそお願いします。ところで仙人さま…ウチュウジンって何ですの?」
「がび~~~ん」
わしは小さくつぶやいた…
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道すがらセイムさんに色々と聞いてみる。先ほどのひげもじゃに何でからまれていたのか。
「彼の名はゲフン、ヌル族の村長の息子でして…。親同士が決めた私の許嫁なのです。」
あのひげもじゃ本当にゲフンっていうんだ…
どうやらこの国は王城を中心として土地が肥沃な東のナル地区とケル地区。西の広大な森林に住まう森の民のヌル地区とネル地区、森の民はそれぞれの地区ごとに2部族に別れており、ゲフンの父親が村長のヌル族、セイムさんの父親が村長のネル族との事。
元々は森の民として同じ一族だったのだが、長い年月を経て2つの部族に分かれ、いがみ合うようになったと。しかし、豊かな東のナル地区とケル地区の台頭により、貧しい森の民が差別の対象になるにつれ、これではいかんと懸念した両部族の父親達が、娘と息子の婚姻を結ぶ事で、昔のように手を取り合い一致団結し、東の民と対等に渡り合おうとしたらしい。
だがそこには思わぬ落とし穴が…
「彼は歳も私と近く、顔も悪く、頭も弱い人ですがそこは問題ではありません。親の決めた事です、逆らうつもりは毛頭ありません。しかし、私は許せないのです。あの方の…ひげもじゃのもじゃもじゃな体毛の毛深かさがだめなのです!」
……セイムさんは真面目な顔をして力強く言いました。
色々とツッコみたいことはありますが、アイツ本当にひげもじゃって呼ばれてたんだ…。
「そこまでの深い理由があるならばしょうがないのう。セイムさんは悪くない、気にするな。」
ものすごく無責任な台詞をはきつつ、適当にセイムさんの肩をもつ。
「だから何度もお断りしたのですが、何度も何度も諦めずに求婚しに来るのです。忘れていましたの、あの人が頭が弱い人だということを…。しかも並大抵の頭の弱さではないことを…。そうだわ、彼はチャンピオンよ!頭の弱さのチャンピオンなんだわと思い、今回はこちらの本気を見せようと、レイクとリイナを引き連れて私→リイナ→レイクの順番で伝言ゲームのように、最後はレイクに罵倒してもらうという行為を続けてましたら、急に暴れ出して私達を襲ってきましたの。わけがわからなかったです。」
えっ、ひどくない?何その精神攻撃。しかもリイナはしゃべれないのに、伝言してるフリだけ…。リイナとレイクは、完全にとばっちりだなこれ。
「この“ひげもじゃヤロウ”、“親のスネかじり”、“右だけ二重ヤロウ”って力強くオイラが言ってやったんだよ!」
いや、そんなに得意げに言われても…レイク。ちょっとひげもじゃに同情するな。そりゃあ怒るよな~~。
「そんな時、襲われそうになった私達を庇うように、ちょうどど真ん中に降臨なされたのが仙人さまでした。本当に助けていただいてありがとうございました。」
……ちょっとセイムさんが怖いな~~~と思った道すがらでした。
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