第8話 運が悪いのかどうか

 そして純平が電話に応対する。外では公園で休憩をしているサラリーマンの姿があった。時刻は昼どきである。すると突如として爆発音が聞こえるのであった。どうやら場所は、すぐ近くらしい。

「事故か。一体どうした。ガス爆発でも起きたか?」

急いで吉田が確認しようとすると、突然の爆発音に周辺は慌ただしくなったようである。車が爆発で炎上しているらしく、燃えているのがわかるのであった。

「すみません、急いで手伝ってください。中に人がいます」

 激しく燃えている車の中に人がいるらしい。急いで鎮火に向けて動いたが、既に手遅れであった。消火活動の際、横山純平も来て手伝いその一部始終を見ていた。そして消防車も来て一時騒然となる中、車の火はようやく鎮火するのであった。

 車の中にいたドライバーは絶望的であった。焼死体で発見されるが、この時点において事件かどうかなんて純平の頭の中には片隅も無かったのである。とにかく無我夢中で、どうするかなんて二の次であった。運が悪かったのかなんて、そんなのは神様にしかわからない相談であったのだ。もしもこの時点において事件の予感と感じていれば、それは職業病だろうとさえ思えていたのであった。

 それだから、証拠の写真や動画などを撮影しようとさえ考えていなかったのである。これが新米としての駆け出しの始まりであった。

 夕方、その話はインターネットのニュース速報で流れた。すぐさまネット上では憶測が流れたようである。事件性が無いかと思われていたが、そんな事は無いとの意見も出ていたようだ。それから12時間が経過した。

 純平は会社に行こうとしたが、京香から警察の人が来ているわよと言われ、会社に行くことは出来なかった。警察から事情を聞かれる事となったのである。

「ちょっとよろしいでしょうか横山純平さん。すみませんが、ご協力をお願いします」

 純平は会社に出勤する事を要望したが、それは無理な話であったかもしれない。あくまで要請とは言うが、協力するには仕方のない事であった。この時点において事件性がどうのこうのと、ようやく感じ取ってくるのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る