第7話 不釣り合いな間柄

「純平、まさかお前が探偵事務所を開くとはな。そんな事をするような奴には見えなかったが、一体何があったのだ? 教えてくれよ、なあ」

 吉田はからかい半分で横山純平に対し、話しかけるのであった。それは同じ会社で休憩の合間に副業に力を入れる純平に対し、素直に興味を持ったのであった。会社は中堅のIT企業であったが、京香が海外の大学院に進学して帰国した時みたいな雰囲気を感じとったようである。

「自分もいきなり会社を辞めてまで探偵業をやろうとは思ってない。あくまで保険だが、京香がなぜ帰国したかは俺でもわからないよ」

 本心では漫画に影響されたとは言えず、中年になった漫画のキャラクターに感情移入して、自分でもやれそうな気がしたという理由を口外できる雰囲気ではなかった。もしもそれを吉田が知ったとなると、どのような仕打ちが待っているかわからないし、それで人間関係が壊れるのも勿体ない気がするのであった。

「そうか、京香ちゃんも何か理由があって帰国した訳だな。京香ちゃんが修士卒で、純平が学部卒なんて釣り合いが取れないと思うけれど、純平的には一体どうなんだ」

 世の中は不条理である、京香は日本の大学を卒業した後、そのまま海外に行ってしまった。自分には何も知らせる事無くである。そしてそのまま自分だけは就職してしまったのであった。京香が何をしていたのか詳細は知らないが、なんでも専門的なMBAを学びたいとか言っていたらしい。

「ふざけんなよと言いたい。何故そんな京香ちゃんが純平の元彼女なんだよって」

「こらこら、京香とは今現在でも別れてはいない事になっているって」

 吉田はそうすると、京香がこれから起業に向けて準備をするのかと想像していると、いきなり電話が掛かってくるのであった。

 

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