チェインソーと四股を固定された女

深夜帯のネットカフェの空調は睡眠の呼気と排泄の呼気とをかき混ぜており、私は機器を操作して、時間と兌換券との交換に依り獲得した権利から短い映画を鑑賞する。

空が青かったり暁かったりする映画で、曖昧な白けた空しか識らないような気がする私は日頃人並みに空に感心がないからかもしれなかった。

何もかも知っているかのような個室は清潔で美しいと思った。要するになにも知らないところが清潔であった。

そこでは眠りと覚醒が渾然していた。

都市は覚醒の裡に中途半端な眠気を含むが、そこでは眠りが媒体となって覚醒を配合する。

静寂を媒体に騒音が溶解している。

暗闇を媒体にして、光が溶解している。

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