第6話 DAY5
DAY1
それは突然のことだった。
まだ暑いこと季節、太陽が登り切った昼下がり、世界同時多発的に突如として緑色の生物、ゴブリンが現れた。
そして、近くにいた人間に対して片っ端から攻撃をし始めた。昼下がりということもあり、ここで少なくない年寄りや子どもが犠牲となる。
しかし、このことはすぐに報道されたこと、警察の迅速に対応したことから被害は最小限に抑えられたと言っていいだろう。
政府は原因の調査を行うと発表。
Twit上では様々な噂が飛び交った。
曰く、国が秘密裏に作った実験動物が逃げ出した。
曰く、異世界の扉が開いた。
曰く、これが予言にあった世界滅亡である。
それらに対しても人が死んでいるのに不謹慎ではないか、とか、ゴブリン程度で人類滅んだりしないだろw、などと言ったリプが飛び交っていた。
大小様々議論が行われていたが、この時はまだ誰も事態の重さを認識していなかった。
DAY2
警察は見回りや武装を強化し、人々に街中を出歩かない様呼び掛けた。しかし、それによりかなり減りはしたものの、渋谷の交差点などの中心街では、街中を歩く若い男女や会社に出勤するサラリーマンの姿が目撃されていた。
彼らはテレビのインタビューに対して、
「いやゴブリン程度ならよゆーしょ!」
「なんなら俺がゴブリン倒して勇者になりまーす!」
「いや、会社から来いと言われているので」
「怖いですけど警察の方もいらっしゃいますし大丈夫だと思って……」
などと言っていたらしい。
さらに、コンビニやスーパーなどは、ゴブリンが発生していなかった街ではいつも通り営業しており、彼ら以外の人々でもそれほど危機感を感じてはいなかった。
しかしこの日、大型のゴブリンが確認される様になる。
彼らは普通のゴブリンとは遥かに格が違った。
二メートルを超える体躯、成人男性を遥かに勝る筋力、100メートル12秒前後で走る圧倒的脚力、そして何故かそのゴブリンは最初から武器を装備していた。
これに対して警察は拳銃で対応するが、数発当たった程度では全く怯むことなく突撃し、人間をボロクズの様に引きちぎった。
さらに、ゴブリンの数も土曜日の数倍の数が出現、全国各地で土曜日以上の犠牲者を出した。
そしてこの日の夕方、とうとう自衛隊が街中に出動。自動小銃の連射には流石のホブゴブリンも耐えられず、多くの骸を晒すことになった。
DAY3
この日、日本は絶望を知ることとなる。
昨日の夕方より行われていた、ゴブリン退治は収束を見せ始めていた。何故なら、1日目、2日目と違い、昼間に新たなゴブリンの出現は確認できなかったからだ。
国はまだ生き残っているゴブリンを殲滅すると発表。人通りの全くなくなった街中を、自衛隊、及び重装備の警察官だけが歩く。
だが、日も落ちた頃にはゴブリン達は殆ど片付き、目撃情報もほとんどなくなっていた時、暗くなった夜空に青白いモヤが浮かんでいるのがTwit上で拡散された。
レイス。
そう名付けられたモヤは、壁などは透過できず、家には入れなかったが、人間や動物などに取り憑いて操作する力があった。
その日、街を歩いていたのは殆どが銃で武装した人々、警察官や自衛隊である。
彼等はレイスに精神を乗っ取られ、本来は味方である人間に対して発砲を行なった。
レイスに操られた人間は情け容赦なく人々を襲うのに対し、警察や自衛隊は彼らを撃つことができなかった。
ゴブリンは殺せても人は殺す許可は出てこない。その日、警察と自衛隊は多くの犠牲者を出してしまった。
DAY4
そして、この日、街中から人がいなくなった。レイスはどうやら夜中にしか活動できない様で、昼間には確認できなかった。しかし、レイスに操られた人々は元に戻ることはなく、人間を求めて彷徨うゾンビと化していた。
そして、ここで図ったかの如く2日目以上のゴブリンとホブゴブリンが現れ、家々を襲う。何故かゴブリン達はレイスに操られた人間を襲うことがない。
数が増えたゴブリン、人間より遥かに高い身体能力を持つホブゴブリン、そして銃を装備し容赦なく人間を殺すレイス。
毎日新しい魔物が登場し、その度に多くの犠牲を払ってしまったことにより、国は及び腰になっていた。
レイスは昼間には見当たらないとはいえ、昨日の今日。視認できないだけかもしれない、また警察官や自衛隊に犠牲が出るかもしれない。
そこから始まったのは、責任の押し付け合いによる膠着状態であった。
操られた人を戻す手段は見つかっていない。だが、彼らを見捨てることもできない。
彼らを見捨てて殺した場合、誰が責任を取る。こうしている間にも人々が襲われている。
そんな議論が続いていた日の午後、突如として電波障害が発生し、電話や通信などが一切できなくなってしまった。
不安に煽られ外に出る人、家に閉じこもる人、そして人がいないことをいいことに強盗などの犯罪を行うものまで出てきた。
DAY5
電気が通らなくなった。同時にガスも使えなくなった。
水だけはまだかろうじて使えるが、いつ使えなくなるか分からないらしい。
それでも時たま遠くからはガラスを割る音や人々の悲鳴が聞こえてくるらしい。
「情報がなくなってしまったので最後の五日目に何が出たのか、電波が何故通じなくなったのかは分かりません」
凛はこの五日間の話をそう締めくくった。
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