彼の力
2時間がもっとか。
私が眩暈に耐えていた時間はわからないが、今までで一番ひどかった。
永遠とも思える時間を、私は必死に耐える。
けれど終わる瞬間はいつも突然やってきて、私の体は気持ちが悪い感覚だけを戻して正常に動き出す。
大きく息を吐く。
そして周囲を見渡す。
「えっ、どうして」
目の前から依頼人が、消えていた。
私が眩暈の発作を起こしているうちに帰ってしまったのだろうかと慌てて柱時計を見ると3時を少し過ぎたころ。
ほとんど時間がたっていない。
どうして?
私は眩暈後の習慣で、ニュースを確認する。
先ほどの依頼人の言っていた事件。
そのものがネット上から消えていた。
「やっぱりこれって……」
「君はとても面白いな。覚えているのか」
声のする方向に振り向くとその先にいたのは、もちろん狭間さんである。
私は混乱した頭を必死にフル回転させる。
私は、依頼人の事件が現実にあったことを知っている。
でも、眩暈のあとには依頼人もさっぱり消えていて、事件自体も消滅した。
そして彼の覚えているのか、という言葉。
彼の小説。
リアリティのある事件の数々。
つまり……でもそんなことがあるのだろうか。
私は恐る恐る推測を口に出す。
「あなたは、過去を改変して事件をなかったことにし、それを小説にしている……?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます