いざ、神殺しの団本拠地へ
「ぎぃやあああぁぁあああ! こんなん死んでまうわぁぁああ!!」
「ゼニガー、落ち着いて。大丈夫だって……たぶん……」
少し暖かい日差しに、心地良い風が吹いている。
なぜかゼニガーはその風が吹く度に絶叫しているのだ。
「アホちゃうんかー!? なんでこんなクッソ高い断崖絶壁を数センチしか無い足場で移動してるっちゅうねん!?」
絶叫している理由、それは今ゼニガーが言った通りだ。
荒削りな剥き出しの岩肌、標高は数百メートルもありそうな壁際――狭すぎる足場は天然のモノと、腐りかけの板で補強されたモノが組み合わさっている。
風がビュービュー、板がミシミシとリズムを奏でる。
そこをミース、ゼニガー、プラム、ハインリヒ、ルインの五人が岩壁にキスをするように密着しながら進んでいたのだ。
その中でも叫んでいるのはゼニガーだけである。
「ひぃぃ、下ぁ絶対にヤバいやつやこれ! 落ちたら死ねるでぇ!?」
「下は見ない方がいいよ……。それにゼニガーは防御力が高いから落ちても平気だって……たぶん……」
「たぶんって、目を逸らしながら言うのは止めーや!! というかワイだけソロやないか!?」
ソロというのは、ゼニガー以外は互いに安全のためにロープで結ばれているからだ。
ミースはプラムと、ハインリヒはルインと。
これで片方が落ちても片方が支えることができる。
「どうせなら、ワイより強そうなハインリヒはんがソロになるのがええんとちゃうんか!?」
「そんなのアタシが許さないぞ、木偶の坊」
ゼニガーのことを木偶の坊と呼んだのは、猫耳フードの少女ルインだった。
ハインリヒとのロープを嬉しそうに握り、距離を縮めてくっつこうとしている。
「ハインリヒ様と、アタシの仲は誰にも裂けない!」
「ハハハ、この子はまったく」
「そういうの今とちゃうやろ!? このハインリヒ大好き猫!?」
「そ、そんな大声で言うなよ木偶の坊……正しすぎて照れちゃうだろ……」
「なんやねんコイツら!?」
ルインは、ハインリヒが絡むときのデレデレっぷりと、ハインリヒが絡まないときのツンツンっぷりの豹変が凄まじい。
それを横目にミースも、相手を思いやる気持ちというのを少しだけ感化された。
ロープで結ばれているプラムの方をチラッと見る。
「な、何よミース……私は大丈夫よ……」
「うん、わかった」
プラムは恐怖を隠そうとしているが、その微かな震えでわかってしまう。
「プラムが落ちたときは全力で支えるよ!」
「ぎゃ、逆にミースが落ちたときは私が支えてあげるんだからね……」
見つめ合う二人。
ゼニガーは高さ以外にも、何かリア充共の雰囲気にやられそうであった。
一行は断崖絶壁を越えて、普通の山道へと出た。
「っはぁ~、ほんま死ぬかと思ったぁ~……」
歩きやすいとは言えないが、それでも先ほどよりはマシだろう。
落ち着くことができたので、ミースはハインリヒにいくつか質問することにした。
「ハインリヒさん、この先に
「ああ。正確には、その入り口だけどね」
ミースは
しかし、どんなに工夫をして、命すら懸けても勝てない敵がいると知った。
殺されてしまった仲間を生き返らせるため、もう目の前で誰も殺されないように強くなるため――ミースはハインリヒの誘いに乗って
「そんなに気負うことはあらへんで、ミースはん」
「そうよ、三人なんだから一緒に気持ちを背負ってあげるわよ」
「ゼニガー……プラム……」
ミースは二人の気遣いが嬉しかった。
そして、自分があまり良い表情をしていなかったことに気が付いた。
パシッと頬を叩いて気合いを入れる。
「若いって良いねぇ……」
「ハインリヒ様もまだまだお若いですよ!」
「ありがとう、ルイン。しかし、キミに言われると何というか……」
ハインリヒとルインも何やら長い付き合いのようで独特の空気感を出している。
ミースはそれを気にせず、質問を続ける事にした。
「ハインリヒさん、そろそろ聞かせてください。レドナを生き返らせる方法は具体的にどうやってですか……?」
「あー。一応、忠告しておくよ。生き返らせることができるのはまだ〝可能性〟だ」
「かっ、可能性やて!? まさかワイらを騙して!!」
レドナと仲が良かったゼニガーが飛びかかろうとするような勢いだが、ミースとプラムはそれを抑える。
「それは最初から言ってたんだけどね。まぁ、でも実績はある。KSX-999 レッドナインの残骸から回収しておいたコレ、何だと思う?」
「宝石……?」
八面体の黄色い宝石のような物が、ハインリヒの手の中にあった。
不思議な天使の輪のような光が周囲を覆っている。
「コレはエーテルコアと呼ばれる物でね、あの子の魂みたいなものなんだ」
「そ、それじゃあ、まだレドナは死んでいない!?」
「ただ、ここからが問題だ。どうやら正常に機能していないようで、このままではどうしようもない。いわゆる仮死状態というやつだ」
たしかに異常が無ければレドナはこうなっていないだろう。
つまり、ハインリヒはレドナの魂であるエーテルコアをどうにかして修復できる手段を知っているということだ。
「それで、僕は似たような状態から復活した〝存在〟を知っている」
「だ、誰なんですか!?」
「彼は
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