鎧の集団

 第三階層へ降りる階段の前に立ち塞がっていた中ボス――それもPTだった。

 リビングデッドが三体、ナイチンゲールが一体だ。

 もちろん、どれも邪霊が取り憑いているのだろう。


「これは……厄介だね」

「一層で苦労したリビングデッドナイトが三体で、しかもそれを回復するナイチンゲールまでおるんか」

「作戦はどういたしますか? マスターミース」

「そうだなぁ……」


 耐久力の高いリビングデッドナイトとナイチンゲールで守りは堅牢だろう。

 今まで通りに戦っていたら倒しきれない。

 攻撃寄りで行くしかないと決断した。


「二人は今まで通りで頼む。俺は邪霊を狙うために攻撃を抑えていたけど、今回はガンガン行くことにする」

「あの邪霊を倒すには上手くタイミングを狙わなあかん、そんなに攻撃にも参加して平気なんか?」

「大丈夫、身体が慣れてきた・・・・・・・・

「慣れてきた……?」

「それに二人も切磋琢磨してるんだ。俺だって色々やらないとね」


 邪霊が浮き上がってきている瞬間に別の敵を攻撃していると、モーション的に間に合わないことが多い。

 それも踏まえて、さらに素早く、いつでも息が上がらず攻撃できるようにスタミナを活かさなければならない。


(スタミナだけは自信がある。これを活かさないと)


 それは気負いではない。

 確信だ。


「マスターミース、念のためにナイチンゲールのコアを渡しておいてください。前衛が無茶をしたら使うであります。止めても――」

「うん、わかった。渡しておくよ。でも、使わせない」


 自信に満ち溢れたミースを見ていると、なぜだか不安が消し飛ぶようだ。

 レドナはナイチンゲールのコアを受け取ったあと、弓の発射態勢に入る。


「では、戦闘開始であります。――星弓!」


 奥にいるナイチンゲールの足を狙おうとするが、リビングデッドナイトが盾で防いできた。

 やはり普通のリビングデッドとは技量が違う。

 もし、冒険者カードのように表示があったのならレベルに差があるのだろう。


「来ます!」

「任せてもらうでぇ!」


 まるで姫を守る騎士のように、ナイチンゲールを中心としたフォーメーションが組まれている。

 ゼニガーは必然的に三体のリビングデッドナイトから狙われることになると思ったのだが――


「我流――〝日ノ軌ひのき四連〟!」

「は?」


 突如、ゼニガーに襲いかかろうとしていた一体のリビングデッドナイトが一瞬で倒れた。

 ゼニガーは何が起こったのか理解が遅れるも、さらに踏み込もうとしているミースの姿を見て理解した。


(ああ、そうや……忘れてたけどコイツ……えらい強いんやったな……)


 ミースの姿がブレる。

 目で追えない。


「我流――〝日ノ軌ひのき六連〟!」


 辛うじて攻撃を受けるリビングデッドナイトの状態だけはわかった。

 凄まじい早さで二刀流の連続打撃を受けて絶命、その瞬間に頭部への攻撃を先置き・・・されていて、邪霊もろとも一瞬で倒しているのだ。

 凄まじい運動量。

 しかし、ミースは息を切らさずに再び攻撃を仕掛けようとしている。


(こんな攻撃を仕掛けられ続けるやなんて……ミースはんはスタミナのバケモンや!)


「我流――〝日ノ軌ひのき八連〟!」


 肉食獣の狩りのような勢い。

 呼吸を乱す事無く、一瞬でリビングデッドナイト三体が邪霊を含めて消滅した。

 ドロップの銀の剣三本がカランと落ちる。

 同時に、バランスを崩したミースが奥側に転んでしまう。


「ミースはん!?」


 奥にはまだナイチンゲールがいる。

 手を鋭利な刃物のように変化させながら、ミースを突き刺そうとするのだが――


「それは貴艦のマスターではないであります」


 一条の輝き。

 レドナが星弓で、ナイチンゲールの頭部を一撃した。

 これで敵PTは全滅となった。


「射線が通ればこっちのものであります」

「レドナはん、貴艦って相手は別に船やないぞ?」

「癖であります!」


 転んでいたミースは恥ずかしそうに笑っていた。


「二人とも、フォローありがとう。信じていた」

「おう、任せんかい」

「当機は高性能ですから」


 ミースは二人に手を掴まれ、立ち上がった。


「さぁ、第三階層へ突入だ!」


(まったく、ミースはんにはかなわんなぁ)


 ちなみにミースの急成長っぷりはひのきの棒+99の成長率アップのおかげもあるのだが、ゼニガーも密かに腰からひのきの棒+99をアクセのようにぶら下げているためにかなり成長している。

 本人は気付いていないが。

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