最初の中ボス
古いモノだがマップ情報はあるため、不正確になってしまったモンスター配置はともかくとして、地形は最短で進むことができる。
それによって通常は大人数で数週間かかるところを、たった21~23日正午の二泊三日で聖杯のダンジョンをクリアしようというのだ。
一階層目で出会ったのは先ほどの邪霊ゴロストンや、邪霊アイアンゴロストン、邪霊グーミスライムや、邪霊レッドグーミスライムなどの弱めの敵だ。
これらは邪霊に対処できるのなら特に問題は無い。
ちなみにドロップアイテムは本来の敵と変わらないので、邪霊の分だけ渋いといえるだろう。
そのドロップの渋さも相まって高難易度と呼ばれているのかもしれない。
「クルーゼニガー、このレッドグーミスライムが落としたグミっぽいの、食べられるのですか??」
「あ~、基本は調合素材として使うっぽいんやけど、食べられはするらしいでぇ」
「ほうほう、パクッと」
レドナは赤いグミを口に放り込む。
しばらくモニュモニュと噛んだあと、無表情で言った。
「不味いであります」
「まぁ、食べられはするけど、食べはせぇへんな」
「先に言えゼニガーこの野郎」
無表情だが怒っているらしく、レドナの口調は崩れている。
それを見ていたミースは、注意するか迷ったのだが、それくらい現状は余裕もあるということでそっとしておいた。
マップが今も正しければ、もうそろそろ強制的に引き締められてしまう地点に到着するからだ。
「前方、モンスター1。注意して」
「おう、やったるでぇ!」
「先制攻撃を仕掛けます――星弓!」
レドナは人型に見える霧向こうのシルエットに向かって矢を放つ。
命中。
しかし、それは平気で立っていた。
「あれが第一階層の中ボス、邪霊リビングデッドナイト……」
第一階層の道中モンスターとは明らかに違う強さ――いや、今まで戦ってきたダンジョンのどの道中モンスターより強そうに思えた。
全身に鋼鉄の鎧を装備していて、右手にロングソード、左手にカイトシールドを持っている。
一見すると生身の騎士に見えるのだが、外れているバイザーから死体の顔がうかがえる。
それはゼニガーに恐怖を植え付けた。
「や、やったるでぇ……!!」
ゼニガーは盾役であるため、敵の一番近くにいなければならない。
必然的に顔も近くなるし、腐臭もきつい。
「うおっ、こいつ!? 剣の扱いを心得とる!?」
それでいて今までの敵とは違い、ある程度の剣技で攻撃してきて、盾で防いでくるのだ。
このテクニックを駆使するモンスターは別格といえる。
攻撃を防ぐゼニガーだったが、もう一つの不安があった。
それは――死だ。
(ワイも殺されたら、あんな顔になるんか……!?)
邪霊リビングデッドナイトの姿が死を思い出させる。
恐怖が心に纏わり付く。
これまでとの戦いとは違い、盾が鈍く、重く感じてしまう。
(ど、どうする!? ワイも攻撃した方がええんか!?)
思考は焦り、空回りする。
大した攻撃ではないのに押し負けそうになる。
というところで――
「あだっ!?」
衝撃が来た。
それは前からではなく、後ろからだ。
「こんなときに何すんねん、ポンコツ!?」
「気合いを入れてやっただけや~、タコ~」
ゼニガーへ最小の魔力矢で撃ったレドナは、彼の口調を真似て喋っていた。
思わずゼニガーは噴き出してしまう。
「ぷはは! なんやそれ、なんでそこでタコが出てくんねん。滅多に見かけないデビルフィッシュやぞ!」
「本場はそういうモノであります。ほら、集中集中」
「わぁっとるわい、タァ~コ!」
死の恐怖から平常心を取り戻したゼニガーは、槍と盾を使い、慣れた手つきで邪霊リビングデッドナイトの体勢を崩した。
「今や! 相手は動けんし防がれへん!」
「大罪を貫き通せ。
レドナは霧の中にも関わらず、まるで鷹の目のように狙いを澄ました。
発射された矢はピンポイントで壊れたバイザーの隙間へ。
崩壊。
身体を倒された邪霊が浮き出てきた。
邪霊はすぐに復活しようとしたのだが――
「もらい!」
パンッ――とミースの攻撃によって破裂させられた。
「いぇーい、やったでぇ! 落ち着けばいけるもんやな!」
「うん、二人が上手くやってくれたから、トドメをきちんと狙えた!」
「いぇーい、であります」
消え去る甲冑――ドロップとして残ったのは一本の剣だった。
ミースはそれを鑑定してみる。
【銀の剣 攻撃力20 炎属性(未達成) 闇の種族特攻(未達成) 攻撃スキルホーリークルス(未達成):銀で出来た剣。+99まで成長させることによってアンデッドや悪魔に効果的な武器となる】
「お~、これは良い武器みたい。でも、今のリビングデッドナイトをあと99体かぁ……あんまり考えたくはないな……」
「まぁ、そんときはそんときや! それよりもっと言うことがあるやろぉ~~?」
「そうだね……第一階層突破だっ!」
三人は階段を降りて第二階層へと向かった。
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