親友

「……ミースはん、どうしてワイなんかを助けてくれたんや」


 ミースは、腰を抜かしていたゼニガーに肩を貸して、宿屋への帰路についていた。

 しばらくは二人黙って歩いていたのだが、ゼニガーが先に口を開いたのだ。


「友達だから」

「ワイは、ワイはな……ミースはんを裏切って、勝手に装備盗んで売って儲けようとしてたんやで!?」

「ゼニガーなら理由があるかなって。それに、前にも言ったけどゼニガーがいなかったら、俺は何も作れていなかったよ」

「ミースはん……」

「だから、ゼニガーにならあげちゃってもいいかなって? そう思ってる」


 ミースの純粋すぎる言葉に対して、ゼニガーは号泣してしまった。

 涙が拭いても拭いても溢れだしてくる。


「ワイは……ワイはなんちゅうことを……なんちゅうことをしてしもうたんや……堪忍してや、ミースはん……!!」

「許すも何も、友達だから――」

「いいや、友達なんちゅう言葉じゃ表しきれへん!」

「じゃあ、何だろう?」

「親友や!!」

「親友……うん、いいね! 親友! 俺とゼニガーは親友だ!」


 二人は言ってはみたものの、少し照れくさくなってしまった。

 それを笑いながら、しばらく歩く。

 緊張がほぐれたのか、ゼニガーはひのきの棒+99を売りに急いだ理由を話す。


「――っちゅうわけで、簡単に作れて簡単に売ってしまうと価値が下がってしまうんや」

「なるほど。じゃあ、売らない」

「えっ、ええんか!? 価値が下がると言っても、一生遊んで暮らせる分くらいは……」

「お金は大切だけど、今はまだ必要な分だけあればいいよ。それよりも作った装備を使って、ダンジョンに潜って、もっと強い装備を作っていって――ハインリヒにも負けないくらい強い冒険者になりたい!」

「そうかぁ……ミースはんは凄いんやなぁ……」


 ゼニガーは、まるで手に届かない存在のように見つめてきた。

 それは違うと首を横に振る。


「ゼニガーと一緒に、だよ」

「み、ミースはん……」


 感極まったゼニガーは『ワイは一生ついていくでぇー!』と叫んでしまい、それが始まりの町アインシアに木霊したという。

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