第8話

「………ぃよっっっっっしゃあああアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」


えっ、……な、……にコレ。

ぶぅーんって、まんがみたいに、布マスクと、冷えピタと、体温計がベッドのうえまでとんできたんですけど。


それより、トモキはどうしちゃったの?

――あ、あ。せっかくのすりりんごがあぶないよ。


「バァカ。こまってんだろ、明菜が。」


ユキヒロ……じゃなく、マサナオがたしなめてくれる。

けど、もう、トモキったらものすごい。

こしをおとして、足を一歩いっぽまえにふみだして。

左手のこぶしをにぎって、ガッツポーズなんかしちゃって。

顔もしたをむいてるから、どんな表情かはみえない。けど、なんか、そのちょっとふつうじゃない姿勢しせいは、まるでわらいを必死ひっしにこらえてるひとみたい。


この状態じょうたいを、むかしどっかできいた言葉でいえば、まさに「感無量かんむりょう」とか、そういうかんじ?

…………しらんけど。


「明菜、ごめんな。りんごはここにおいとく。」


……しかも、なあに?

きゅうに、明菜、明菜って……。

さっきからみんなどうしたの。


ユキヒロが、トモキの右手から、その「りんご」と呼ぶにはちょっと「りんご」すぎる「りんご」をとりあげて、学習机のうえにおいた。


「ふふふふふふふふへ」


このときの、トモキのだら〜しないわらいかたといったら。

せっかくのイケメンもだいなしだよ。

ああ、なんだかさっきから、だんだん悪寒おかんがひどくなってきたような……。


そのとき。

がつーんっ!っていう、なんともいやあなかんじの、にぶい音がきこえた。


「あ……」


「おまえ、いつまでヘロヘロしてんだよ。」


あの、ちょっとかん高い――とくちょう的な声が、うしろからトモキにむかってそうすごむ。


は、いつのまにしのびよったのやら、トモキの背中せなかに体当たりをしていた。

……っていうよか、思いっきり頭突ずつきした、っていうほうが正しいかなぁ。


「――ミツル!」


ユキヒロがさけんだ。


やられたトモキは、「……いぃ~つぅ。」なんていいながら、でもぜんぜんおこってるかんじじゃなくて、むしろ――いままでよりも、なおのことしまりのない顔になって、ゆっくりとうしろの刺客しかくをふりかえった。


「んもぉ~。いきなりくるよなあ、おまえも。」


ほんとだよ。

さっきから、あなたたちの行動こうどうぜんぶ、さきがめなさすぎてめちゃくちゃ心臓しんぞうわるいです。

そして、――……それよりなにより、いまのトモキの顔がホラーすぎます。


「…………」


ミツルはぶぜんとした表情のまま(とはいえ、やっぱりトモキと目をあわせようとはしないで)、なにもこたえない。

と、ここで、


「トモキはまだしも、おまえのほうの手口てぐちはみえすいてんだよ。」


って、なぜかユキヒロが、トモキのかたをもっちゃった。

……ちょっとまって。「手口」ってどういうこと?


「どさくさまぎれに派手はでなマネしたって、明菜もわかるよ、さすがに。」


そういって、マサナオまで、よってたかりはじめた。

けど、そのけんについてはおあいにくさま。わたくし、ぜんっっっぜんわかりませんでございます。


「……ねえ。さっきから、名乗なの順番じゅんばんとかにすごくこだわってるみたいだけど、何……?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

にあみす・そると 関藤みずほ @kling22

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ