第14話 キャンプ
それからもケヴィンは、森で遭遇するモンスターを相手に無双した。
「ま、まずいです、
「てりゃあああああっ!」
──ズバズバズバッ!
「なっ、
「たぁああああっ!」
──ズンバラリンッ!
「あ、あれは
「とぉおおおおおうっ!」
──ガキンッ、ガキンッ! ズバババッ!
「「「…………」」」
モンスターとの出合い頭に、ケヴィンは敵のもとに駆け込んで、あっという間にモンスターを全滅させてしまう。
先輩冒険者たちは、まったく出る幕がなかった。
少年は先輩たちに、かわいらしいとも形容できる笑顔を向ける。
「ミノタウロスと比べても、弱いモンスターばかりですね。……あ、えっと……俺、何かまずいことしてますか?」
「……いや、ええよ。ケヴィンはそのままでいてな。うちらのほうがそのうち慣れるから」
「あはは……。でもこうもケヴィンさん任せで何もしないと、クエスト報酬をもらうのもいいのかなって思っちゃいますね。せめてケヴィンさんの取り分を増やさないとダメかも……」
「や、やめてください! 報酬は等分にするべきです! いえ、むしろ俺はFランクなんですから、俺の取り分を少なくした方が──」
「それはないぞケヴィン。落ち着け。干し肉食うか?」
そんなこんなを繰り広げながら、ケヴィンらの一行は歌声山の麓にある森をたやすく攻略し、快調に歩みを進めていった。
彼らはやがて、森の出口へと差し掛かる。
そこから先は、荒涼とした岩肌と断崖による山地へと景色が移り変わる。
山の頂上へと至る道は、人が歩ける天然の登山コースのような道がわずかにあるばかりだ。
空を見れば、遠くの山間に夕日が落ちようとしている頃。
オレンジ色と紫色が入り混じった景色は美しいが、冒険者たちはそう暢気なことばかりも言っていられない。
今後、夜が深まり暗くなっていけば、登山の危険度が大幅に増すことは明らかなのだ。
「このまま登っていくんは危険すぎるな。今日はここで野宿して、歌声山の攻略は明日にするか」
ジャスミンの提案にパーティ全員が賛成し、一行は森の出口付近に陣取って、野宿をすることにした。
薪を拾ってきて焚火を作り、荷物として持ってきた野菜や保存食、調理器具を使って料理をする。
ケヴィンは野営の経験がほとんどなく、先輩冒険者たちの指示であれやこれやと動いた。
ジャスミンらは「ずっとケヴィンに頼りきりなんや。このぐらいはうちらにやらせてや」とケヴィンを休ませようとしたのだが、ケヴィンのほうが「じゃあ、野営の仕方を教えてほしいです」と言って自ら手伝いに走ったのだ。
そうして夜が深くなった頃には、料理も出来上がる。
ケヴィンは三人の先輩冒険者たちと焚火を囲んで、一緒に食事をした。
料理は主に、魔導士のルシアが担当したのだが──
「……っ! おいしいですルシアさん! 料理上手ですね!」
「ふふっ、よかったです。と言っても、具材を煮込んだだけなんだけどね」
メインである干し肉のスープには、にんじんやキャベツ、玉ねぎなどの野菜も使われていて、ほどよく塩気もあってケヴィンの舌を喜ばせた。
硬くて味気ない乾パンも、スープに浸して食べればなかなかのものだ。
ドライフルーツやワウが採取してきた木の実も食卓に並べば、それなりに豪勢なディナーになる。
「そもそも一泊野宿する予定やからって、野菜を持ってくるって発想がな」
「旅先でも、なるべくおいしいものを食べたいじゃないですか」
「うちの胃袋はもう、ルシアにつかまれてあかん。ルシア、うちと結婚して……!」
「はいはい。ジャスミンさんはいろいろ頼りになるし、それもいいかもしれないですね」
ジャスミンがルシアにひしっと抱きつき、ルシアは少し困ったような顔でジャスミンの頭をなでる。
それはもちろん冗談なのだろうが、ケヴィンはその光景を見て、なんかいいなぁと思っていた。
「ケヴィン! ワウが採ってきた木の実はどうだ?」
ワウがそう言って、ケヴィンの隣に座って身を寄せてくる。
無邪気なのだろうが、少年は少しドギマギしてしまう。
「は、はい、おいしいです。でもワウさんも、食べられる木の実を見分けられるの、すごいですよね」
「そうか? そんなのワウの集落のメスなら誰でもできるぞ」
「でも俺はできません。ずっと街で暮らしてきて、聖騎士になるための訓練ばかりしてきましたから」
「へぇーっ。なんだ、ケヴィンにもできないことあるんだな!」
「そ、それはそうですよ」
やがて食事も終わり、就寝の時間になる。
二人ずつ交代で見張りをして、残りの二人は毛布に包まって眠りにつく形だ。
くじ引きをした結果、ジャスミンとワウ、ケヴィンとルシアがそれぞれペアを組んで見張りをすることになった。
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