第32話 分かりやすく例えてみた1


 ナマズのようなゾーオを倒して、数日間が経った日のことだ。


 あれから毎日のように、日夜テレビのニュースでは『突如現れた、謎の光の正体は?』が盛んに流れており、同時に──。


「ごめんなさいにゃ、ごめんなさいにゃごめんなさいにゃ!」


 相澤の部屋では、シロルの鈴と謝罪の声も、鳴り止むことは無かった。

 旗から見ればシュールにも見える光景かもしれない。

 しかし俺と相澤は、二足で立ったまま謝り続ける猫を、憐れむことしか出来なかった。


 だがそれも、長くは続かなく……。


「もう知るかにゃ!?」


 キレた。シロルのやつとうとうキレやがった。

 

 首から鈴を外し、地面に叩きつけ何度も踏みつけるシロル。

 彼の性格からして、良くここまで持ち堪えた方だとは思うが、


「だ、大丈夫なのか? その……ほかっておいても」

「知らんにゃ。明日の事は明日の上司が何とかするにゃ」

「お前じゃないのね……」


 シロルは一頻り暴れ終え、毛づくろいを始めた。

 潔いほどの切り替えを見せた彼は、その後窓の近くまで歩き、ググッーっと伸びをする。

 表情を見る限り、尾を引いてない。すこぶる晴れやかだが……。


 こいつ、本気で投げ出す気なんじゃないか?


「それよりも、やらないといけない事があるにゃ」

「やらないといけないこと、それって何かな?」


 相澤の問いかけに、シロルは仁王立ちし大きなため息をつく。

 そして彼女に向け、ビシッと指を差した。


「このままにゃ、次にゾーオが現れても澪は戦えない。早急の対策をしにゃいと」

 

 確かに……。


 シロルの言うように、次にゾーオが現れても相澤は魔法が使えない。

 っというか、使うたびに結界にボコボコ穴を開けてニュース沙汰になってたら、いつか大事になってしまう。

 でもそうなると、ゾーオはどうやって倒せば……。


 そうだ!!

 

「なぁシロル。相澤がこんなだし、魔法少女じゃないけど俺がゾーオを倒せれば良いんじゃないか?」

「ノ、ノアちゃん!?」


 相澤に頼り切らなくても、俺が一人でゾーオを倒せれば何も問題はないじゃないか。

 何より、後輩の女の子である相澤を、危険な目に合わせなくて済むし、破壊行為に罪悪感を感じなくても済む。

 しかし俺の提案に、シロルは浮かない顔をしてみせた。


「気持ちは嬉しいし、言いたいことは分かるにゃ。でも兄さんじゃ、フェーズワンを倒すのが関の山だにゃ」

「──ッ、何でだよ!! それじゃまるで……」


 まるで、俺の恋心がちっぽけみたいじゃないか……。

 だってそうだろ? 俺達は『恋する力が、魔法の力の源』のはずなんだから。


「……魔法とは何か、少し説明したほうが良さそうにゃね」


 こちらの気持ちを察っしたのか、改めて魔法について教えてくれると言うことだ。

 

 以前相澤から聞いた、恋する力だけが魔法の力、その全てではないと言うことなのか?


「さて、何から話すかにゃ」


 そう呟いたシロルは、窓の枠に手を付きもたれ掛かり、何処か遠い目をしてみせた。

 

 俺は彼の言葉に耳を傾ける。

 もしかしたら、今後の対ゾーオ戦闘に役に立つヒントが眠っているかもしれない……。そう思ったのだ。

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