第33話 分かりやすく例えてみた2
「確か、恋する力が魔法少女の力の源なんだろ?」
俺は、以前聞いた話をシロルに問いかけた。
「間違ってにゃいけど、それだけじゃ三十点にゃよ」
「やっぱりか、おかしいと思ったんだよ。いくら思いが人一倍強くても、相澤だけあんな規格外の魔法を使えるなんて……」
俺が相澤に睨みを効かせると、舌をペロっと出し後頭部をかきながら「えへー」っと照れてみせる。
以前俺に教えてくれた三十点だけの情報の事を、誤魔化しているつもりなのだろうか?
「俺っちが今から、二人に魔法とは何かを説明するから、そこに並んで座るにゃ」
俺と相澤は、シロル先生の指示に従い並んで床に座る。
すると先生は満足そうに微笑み、窓枠の中央から俺達二人……。
もとい、相澤一人と俺一匹を見下ろした──。
「おほん、では早速。今回テーマであるゾーオと戦うための魔法。実はそれには大きく三つの要素が関わってるにゃ」
「三つもあるのか?」
「そうにゃ、まず一つ目はさっきあんさんが言ってた恋する思いだにゃ」
シロルは説明と共に、人差し指を立てる。
隣からは「プニプニ肉球……」っと、呟く声が聞こえた。
どうやら誰かさんは、既に集中力を欠かせているらしい。
「まずは澪にゃんだけど、恋する思いは『
良かった……。
てっきり俺の恋する力が、さっぱりなのかと思ったけどそうじゃないらしい。
俺はシロルの話を聞き、ひとまず胸をホッと撫でおろす。
「二つ目は、力を扱うためのコントロール、そして三つめが、その思いを魔法に変える『変換率』だにゃ」
指を二本、三本と器用に伸ばし、満足そうな表情で先生を堪能してたのだが……。
俺の隣の相澤は、何処から取り出したのか俺の顔写真が映ったピンバッチを、手の中で盗み見し、にやにやとしている。
いつの間に、グッズ化してんだよ……。
それに気付いたのだろう、シロルも一瞬顔をひきつらせたが、窓枠から降りて俺の目の前へと移動してきた。
どうやら出来の悪い生徒の事は諦め、ほぼ個別指導に変更らしい。
「順番に、まずコントロールだにゃ。これに関しては、澪は『ガバガバ』それも、過去に類を見ない程の……。逆に、兄さんは『天賦の才』を持っていると言っても過言じゃにゃいにゃ」
自分の名前が出て「えへへー」っと愛想笑いを浮かべる相澤。
いや、褒められてないからな?
俺は出来の悪い後輩を見て、ポフっと頭を抱えた。
「澪に関しては、力が強すぎるからってのも原因にゃんだけど……。まぁ、詳細は後でまとめて説明するにゃ」
呟くように説明するシロル。その表情は暗かった。
察するに今回の結界の穴も、この事柄が原因なのだろう。
しかしそれに触れないのは、彼なりの彼女に対するはからいなのかもしれないな。
「最後は変換率。言うまでもなく澪は『化け物クラス』。そして兄さんの変換率は──」
シロルの顔つきが一際厳しくなり、真っ直ぐに俺を見つめる。
俺は少しの会話の間に、ゴクリと喉元を鳴らした……。
「残念にゃがら、これに関しては『ダメダメ』なのにゃ。兄さんがゾーオを倒せない理由は、ここがポイントになるにゃよ」
「ぜ、ダメダメって……」
恋する思いが否定され無かった事は喜ばしいが、
「なぁ、どうして変換率がそんな極端に悪いんだ? 俺が男だからなのか?」
「性別関連は後で説明するにゃ。本題に戻るんにゃけど、変換率ってのは基本、例外もあるにゃけど恋の迷いや、悩みにゃんかに、深く影響してるんだにゃ。兄さんには、心当たりがあるんじゃにゃいか?」
「ッ…………」
図星だった。
シロルの言うように、俺には自分の恋に踏み出せない理由があるから……。
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