番外編 1月1日

寒空の下、俺は神社の鳥居の下で待っていた。本来なら今頃布団にくるまって寝ているだろうが、今年は違った。

「ご、ごめんなさいっ・・・遅れ・・・ました」

集合時間の5分前、そう言って走ってきたのは綾瀬さんだった。音寧は俺にくっついたまま綾瀬さんに手を振った。

「まだ時間じゃないし大丈夫だよ。明けましておめでとう。」

俺がそういうと照れたように少し俯いてから明けましておめでとうございます。と優しく微笑んだ。御神はレッスンがあって少し遅れるらしい。佐伯は…遅刻だろうな。元々佐伯が時間通りに来るようなタイプじゃない事は誰もが想定済みだ。その時、『5分遅れる』とLINEが佐伯から来た。悪い意味でも彼は期待を裏切らない。約束の時間から10分程過ぎて佐伯はやって来た。お詫びだと熱々のおしるこを人数分持って。まぁ…美味しかったので良しとしようか。

気がつくともうすぐお昼どきで、人も増えてきていた。今から長蛇の列に並ぶことを考えるとだいぶ気が滅入ったが、それも思い出の一部だと笑っていた佐伯のお陰で少し楽しかった。だいぶ人気も減った頃、御神から『今レッスンが終わったのでそっちに行きます』とLINEがあった。この外にいる時間を感じずに大して待たずに参拝出来るのは羨ましい。30分頃したとき、マフラーを口元までしっかりとした御神が来た。防寒対策もバッチリらしい。「明けましておめでとうございます」と深々と礼をして新年の挨拶をした。

「願い事何にしよっかなぁ」

音寧は寒そうに俺のコートの中に潜り込んで考えていた。

「いい?白藤くん。初詣はお願いをするんじゃなくて神様に感謝をするのよ」

御神は音寧に言うと、お賽銭用のお金を財布から55円取り出した。

「15円じゃないの?」

「家では毎年55円なのよ。5重にご縁がありますようにって。50円玉と5円玉は穴開き銭って言って運が通るってゲン担ぎなのよ。」

そう言って彼女は財布をしまって「あんまり意味ないと思うけど」と少し微笑んだ。彼女はお賽銭箱に投げ入れ2礼2拍手1礼をした。俺らもお賽銭を投げ入れ、2礼2拍手1礼をして、『昨年はありがとうございました。今年もよろしくおねがいします。どうか、ピアノ部の大会で優勝出来ますように。』と感謝と願いを込めた。


おみくじの結果↓

黒宮 吉

綾瀬 中吉

白藤 吉

御神 大吉

佐伯 末吉








2022もよろしくお願いします

            上高地


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