第5話また、ピアノ部。
部員は5人になってから1ヶ月が経ったものの一向に顧問が決まらず、部活動としての活動が開始出来ずに居た。
「今日も集まるだけかよー。」
「仕方ないじゃない。そんな事言うなら先生見つけてきなさいよ。黒宮君は寝てばっかりだし。水澄は図書委員の仕事が多くてなかなか来ないし。白藤君は黒宮君にぴったりくっついて離れないし。」
部員同士の顔合わせはもうとっくに済んでおり、毎日親交を深める為だけに昼休みと放課後に集まっていた。
「御神だってレッスンだとかなんとか言って週3しか来ないじゃね―か。」
集まる。と言っても、全員が集まれることは珍しい。俺は常にピアノ室にいるから集まるも何もないが。
「黒宮居るかー?」
「げ。」
突然ピアノ室に入ってきたのは担任の
米センは俺を見つけるなり、ズカズカと近寄ってきた。
「黒宮、授業は?」
「サボりました…ね。」
音寧はこの光景に慣れていて、変わらず俺にくっついているが、御神は少しびっくりしてるらしい。
「はぁ…。ったく、最近は放課後まで残って此処にいるらしいじゃないか。」
どうやらバレていたらしい。米センはピアノ室に居るメンバーを疑問に思ったのか、俺が手に持っている申請書に視線を向けた。
「何だ、それ。」
俺は申請書を米センに見せた。
「再開させるんです、ピアノ部。」
ピアノ部の名前を聞いた米センは少し驚いていた。米センはピアノ部のことを知ってるようだった。
「ピアノ部…か。懐かしいな。俺が此処の教師になって2,3年後に廃部になったんだ。廃部になるまでは俺が顧問だったんだ。」
驚いた。知っているどころじゃないじゃないか。まさか米センがピアノ部の顧問だったなんて。
「顧問、まだなのか?」
顧問欄が空白なことに気づいたのか、意外そうに言った。
「はい。」
「俺でいいならなるけど。」
こんなにあっさりと言われるものなのか。もし米センが顧問になったら生活態度やら何やらうるさく言われそうだが、このタイミングを逃したらもう顧問をやってくれる先生には出会えないかも知れない。俺としては別にいいのだが、今日は綾瀬さんが居ない。顧問を決めるのには全員からの承諾が欲しかった。
「私は是非米本先生にお願いしたいわ。」
「俺は別に誰でもいーけど。」
「クロが良いならいーよぉ」
「俺は良いけど綾瀬さん次第じゃない?」
俺がそう言うと「確かに。」と皆が頷いた。もしかしたら綾瀬さんから返事が聞けるのは明日以降になるかも知れないな。そう思ったとき、ピアノ室のドアが開いた。
「遅れてすみませんっ」
走ってきたのだろうか、綾瀬さんが息を切らしながら入っていた。綾瀬さんって校内を走るようなタイプだっただろうか。御神も驚いた顔をしている。もちろん、米センも。
「あ、あれ・・・米本先生。何故・・・此処に・・。こ、こんにちは。い、今走ってきたのは・・・見なかったことに・・・」
米センに気づいた綾瀬さんは申し訳無さそうになって、何度も頭を下げた。
「綾瀬さん、米センが顧問をやってくれるそうなんだけどどう思う?」
「ほ、本当ですかっ」
綾瀬さんは目を輝かせて言った。なかなか決まらなかった顧問が決まって嬉しいのだろう。
「お願いしますっ!」
と、また何度も頭を下げた。それを見た米センは少し嬉しそうに
「こちらこそお願いします」
といって申請書にサインをした。
『顧問 米本 侑』
「またこうしてピアノ部の顧問になれて嬉しいよ。」
こうしてピアノ部の顧問が決まった。
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