お酒を飲んで就活の面接に臨んだら内定が貰えた話

雨宮いろり・浅木伊都

飲酒 is POWER

ある春のこと、大学四年生となった私は就活に身を投じ、惨敗していた。



何しろサークル活動とか社会貢献活動とか、なんかそういうのをしていなかった。中高大と、一切他人と関わってこなかった。

余談だが今大学時代に戻してあげるよ!と言われても、多分サークル活動はしないと思う。人と関わるキャパシティが極端に低いので…。


しかし人と積極的に関わった経験がないと、就職活動の面接で、まあバンバン落とされる。


第一志望の出版社は、三社連続最終面接落ちで号泣し、銀行の営業職に応募したら暗いから営業に向いていないねと言われ、SIに応募したら上の指示を聞かなさそうと言われた。雇ってみないと分かんないでしょうが!と吠えたところで届かない。


特に「暗い」は業種を問わず一番よく言われた。

「明るくなさそう」

「気難しそう」

「言いたいこと言えなさそう」

「根に持たれそう」

と、色々言い方を変えながらではあったが。

っていうか、根に持たれそうとか冤罪すぎじゃない???圧迫面接にしても言っていいことと悪いことがあるだろと思いつつ、当時の自分はそれをいちいちまともに受け止めてへこみ、泣いていた。




そうして内定を一つも持たないまま一か月を過ごした私は、そろそろ「暗い」と言われても「私は根暗だから駄目なんだ!!」というよりは「はいはい暗いですサーセン」くらいのノリで受け入れられるようになった。悪口も言われ慣れると飽きてくるものである。ワンパターンは死。不変は罪。


で、そこまで軽いノリになると、面接も何というか、消化試合になる。

良い意味で言えば緊張せず、悪い意味で言うとナメてかかることになる。


その結果、酒好きの私は「自宅で缶ビール二本開けてから面接会場に向かい面接を受ける」というテクニックを編み出した。

テクニックというか、まあ、午前中に飲酒したあとに午後面接があることを思い出しただけなんですけれど。


その途端、内定がごろごろっと手に入った。


嘘かと思うかもしれないが本当だ。

ちなみに私にとって缶ビール二本の酒量は「酔いはしないけどしらふってわけでもない」という感じの量である。

その程度の飲酒によって「しらふじゃない、ちょっと陽気な自分」で面接に挑むことができたのでは、と思料している。

つまり私は、面接ウケする、社交性のある自分を、飲酒によって手に入れたというわけ。

缶ビール二本で内定もらえるんなら、高い買い物じゃない。




ま、見方を変えれば、缶ビール二本ていどで、企業の人事はコロッと騙されるというわけで、だから面接で何度落とされたとしても、自分はくそ人間だ…なんて思いこまなくてもいいんだよ。


と、あの当時膝を抱えて泣いていた自分に、ビールを注ぎながら言ってやりたい。


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