第5話 トモダチ

 わたしは柿崎茉祐かきざきまゆ、中学二年生。

 今のわたしには、悩みがある。それは友達のこと。世間一般で言う、所謂「対人関係」っていうやつだ。


 今年はクラス替えがあったから、去年やっとの想いで作った人間関係なんてあっという間に崩れてしまった。仲良しだった子たちはみんな別々のクラスになり、今ではほとんど交流もない。あの一年はなんだったの? ってくらい。


 その代わり、わたしには新しい『トモダチ』ができた。

 理加りかちゃん、由芽ゆめちゃん、恵美めぐみちゃんの三人。そこにわたしを入れた四人で、大体いつも一緒にいる。とてもいい子たちだとは思うんだけど、なんだかちょっと違うんだ。



「今度の土曜さぁ、ショッピング行こうよ」

「うちダルいから週末は家族と過ごすデーとかなんだよね、マジしんどいやつ」

「なにそれ最悪じゃん、じゃあ明日の帰りとかどう?」

「あ、じゃああたし家に聞いてみるね」



 お昼休み、理加ちゃんがそう言い出した。由芽ちゃんと恵美ちゃんがそれに倣って次々に喋る。わたしも、わたしも言わなきゃ。



「わたしも、親に聞いてみるね」



 すると、理加ちゃんたちは私の方を向いて笑顔で言った。



「え? 私、茉祐のことも誘った? やだ茉祐、なに勘違いしてんの? 今の、私ら三人だけの話なんだけど?」

「あ……そ、そうか、そうだよね、あはは、ごめんね」



 ――私たちは四人でいつも一緒にいるのに、今だって四人で顔を突き合わせてるのに、いつだってわたしだけのけ者なんだ。

 でも、そんなこと言えないから、一人になるのが怖いから、そうやって何でもないフリをして笑うしかできない。


 わけがわからなくて、意味がわからなくてわたしが一人で泣いていると、いつも理加ちゃんは目敏くわたしを見つけてそっと寄り添ってくるんだ。



「どしたの、茉祐。私らトモダチじゃん、何か悩んでるなら話してよ」



 そして、そんなことを言う。

 わたし、どうしても理加ちゃんたちと壁を感じるの。

 本当はそう言いたいけど、言ったら色々なことが終わるような気がするんだ。だから「何でもない」ってその言葉を呑み込むしかない。



「恵美って地毛がちょっと茶入ってていいよね」

「そう? あたしは理加みたいにふんわりしてる髪が羨ましいな」

「わかる、理加の髪ってふわふわしててかわいいよね」

「なに言ってんの、由芽も恵美も素敵じゃん。オシャレでかわいいよ」



 今日も理加ちゃんたちは、三人で楽しそうに話している。そして、こちらを見たかと思いきや、にっこりと笑った。



「茉祐は野暮ったいよね」



 トモダチって、何なんだろう。

 わたしは今日も、わたしにだけ冷たいトモダチのことがわからなくて怖い。

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