第2話
「
「はい」上官に呼ばれ、煙草を咥えたまま振り返る。
あごひげを蓄えた精悍な顔立ちの大男、
「定例会議、明日に延期!」
「了解です」ガラスの灰皿に吸い差しを押し付けて漆川大佐に一礼する。大佐は勲章をジャラジャラ鳴らしながら喫煙室を後にした。
ハーッとため息をついて自分の机のモニターを開き、役職者あてに会議延期のお知らせを通達した。こういうチマチマした作業は好きじゃないが、漆川大佐は「俺の威厳が伝わりやすいだろう」と何故か俺にこうした用事を申し付けるので最近ではある種の言いがかりだと思うようにしている。
上官の命令は絶対。
マレ軍はマルムの奪還を一世代で貫徹すること。
…分かっちゃいるが、会議なんて名ばかりのオッサン連中のダベリ場だし、部下は言うこと聞かねぇし、毎週木曜になるとその手のことで頭痛に悩まされる。あと四、五年して中佐に上がる目途がつけばもちっと楽になるかもしれないが。
「芳人少佐ー」ふいにモニターが手のひらで隠される。
「人たらし大将」ため息をついてモニターをにらむ。クソ、文字が見えん。
「人聞き悪ーい」手のひらの主は意にも返さない。
「明日ぁ、アフターひま?」
「お前とデートはしない」
「ええ~?飲みだよう。健全なさあ」
「クネるな」
はあい、と男はヘラヘラ笑いながら俺に書類を渡す。
フワフワの金髪に人懐っこい童顔。女と見まごう陶器のような肌。
山田太郎少佐。俺の同期だ。
スラリとした長い脚のコイツが町を歩けば黄色い声が上がる。その碧眼が女を殺した数は幾知れず。多くの男たちが強くなるために、女にモテるために身体を無茶苦茶に鍛え上げる。筋肉こそが正義なのだと。だが太郎はそんなことはどこ吹く風だ。かと言ってナヨっているわけではない。
太郎はその身のこなしと手さばきで千人の首を狩ってきた。
誰に教わるでもなく。人懐っこい笑顔で。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます