第5話 リミット

 ここからETC本社ビルまではそこそこ距離がある。それに加え、モンスターたちが街を破壊しているので、道が塞がれたりなんなりでスムーズに行くのは厳しいだろう。


 「ここからETCまでの直線距離ってどれくらいだっけ?」


 「えっと確か…5kmくらいだったかな?てか、あんた脱走してそこまで行ったんだから、体感でどれくらいとかわかるでしょ!」


 「いやぁ…なんも考えずに走ってたから。」


 「はぁ…」


 ともかく、5kmなら意外とすぐに着きそうだ。


 「それより、私たちこんなレベルで勝てるの?とてもそうは思えないんだけど。」


 「そ、それはさ、黒幕にこっそり近づいて脅せばいいんじゃない?」


 「そんな上手くいくわけないでしょ?とりあえず、本社の近くについたら、周りの雑魚を倒してレベル上げするわよ。」


 「へいへい。」


 「おい、あいつ、青と黒のプレイヤーじゃないか?」


 「でやがったな!倒してレベルアップしてやる!」


 ここで戦闘か。人数は2人。なんとかなる。


 ザザッ


 おっと、モンスターもでてきた!…5体も。


 「はぁ?モンスターも出てくんのかよ!」


 「いいじゃん。大量の経験値ゲットのチャンスじゃんか。」


 「桜…流石に多くないか?」

 

 「やるっきゃないわよ!早くレベル上げないとでしょ?」


 それもそうだ…まだなれないが、つべこべ言ってられん!


 「よし…じゃあ俺はプレイヤーを担当する。桜はモンスターを!おりゃあ!」


 「ちょっと、プレイヤーを攻撃してどうするの…」


 「お、おいきたぞ!やっちまえ!」


 「やーーー!」


 1人がこちらへ迫ってきた。だが、俺の方が能力は上だっ!


 「〈セレストスラッシュ〉」


 「えっ…」


 パシャアン!


 「前田ーー!」


 「よし…これでまず1人。」


 「う、う、うわぁぁ!」


 「あ、待てっ!はぁぁ!」


 「やっ!ちょ、刀也待ちなさい!」

 

  と、ここで桜が引き止めてきた。


 「〈桜斬り〉!」


 「ボゲェー」


 パシャァン


 「やるな桜!この調子でどんど…」


 「やっ!」


 ジャキン!と桜が俺を斬りつける。

 

 「痛っ…なんだよ急に!」


 「あんた、自分がなにしたかわかってるの!?人を殺したのよ?モンスターを倒してレベルを上げればいいのに…」


 たし…かに…そうだ。俺は…人を…


 「で、でもさ、きっと復活できるって。倒したときのパシャァン、っていうあれも、きっと倒されたってわかるような演出だって。」


 ピカン


 桜と話していると、上空にモニターが出現した。


 「お久しぶり。調子はどうかな?ゲームが開始してから3時間が経った。現在の人数は全体の7割にまで減ったようだね。思ったよりバッチバチだ!」


 何がバッチバチだ!だ。こんなことして、何がいいんだよ!


 「ちょっち今困惑してる人が多そうだから、説明しておくよ。倒されたプレイヤーについてだ。これに関しては…心配いらない。ゲームが終了したら、全員復活する。いいか?俺はゲームを楽しみたいだけ。死を恐れることはないさ。それじゃ、引き続き楽しんで!」


 そう言うと、モニターが閉じた。


 「信じられない。いくら復活できたって、人を殺すなんてそんなこと…」


 「桜。今は一刻も早くあの男にたどり着かなきゃならない。だから…目を瞑るんだ。」


 「〈オフ〉」


 「桜?」


 「ちょっと休ませて…正直きついものがある。」


 「わかった。」


 突如始まったこの狂気じみたバトル。精神的に辛いのも無理はない。だが、それを乗り越えないことには、黒幕へとたどり着けないのもまた事実だろう…あー!いらつくぅ!


 「ん?」


 「はぁ…はぁ…倒してもいいんなら…遠慮してる暇なんかねぇ!」


 まずい、さっきにがしたやつが桜を刺そうとしてる!


 「桜!後ろ!」


 「え?」


 「ごめんな、許してくりぇ!」


 「きゃぁあ!」


 「桜ー!」


 スッ


 「え?」


 「剣が…透けた?」


 「はっ!〈セレストスラッシュ〉!」


 「うわぁあ!」


 パシャァン!

 

 「何が起きたの?」


 ピカン


 再度モニターが現れた。


 「そうだ、あとこれもいい忘れてたよ。バーチャルスーツをまとった状態で攻撃したり、バーチャル武器で生身の人間を攻撃しても、ダメージははいらなくなっている。お互いコネクトした状態で戦うことを推奨するよ。生身でもいいけど、1週間後には勝者決めたいから。てか、決められなかったら全員お陀仏だからね。それじゃ。」


 そうなのか…それより、1週間後までに決着をつけないと駄目なのか?そんな…


 「もう後戻りはできないわね。」


 「…」


 「私はプレイヤーを倒さずに、黒幕に直接会ってこのバトルを終わらせる。刀也は刀也の行きたい道を選びなさい。」


 「俺は…」


 「一刻も早く、これを終わらせたい。プレイヤーは復活できるんだ。どんどんレベルを上げなきゃ。だから、俺はプレイヤーを倒して、レベルを上げる。モンスターは桜に任せる。」


 「わかったわ。一緒に…がんばりましょう。」


 「ああ…よし、先へ進もう。」


 のこり1週間…絶対に終わらせる!






 「あと1週間…」


 「バート…ゲーム進行お疲れ様。」


 「お前に協力すれば、本当に俺達を解放してくれるんだろうな?」


 「あぁ…保証しよう。私も、強引なやり方はあまり好みじゃないんだ。」


 「ならいい…それより、このビギンセレスター…一度相手をしてみたいな。」


 「まだ待て。私のことを話されたら困る。それに…」


 「もし彼が人間じゃなかったら、君でも勝てないかもしれないし。ふっ…なんて…ね…」

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