26.秘密基地で
あーっ!パルパル様のふわふわ、つぶらな瞳。抱きしめたい、超絶可愛い。
私は一気にほわっとした気持ちになってパルパル様にひざまづいた。
「パルパルさまっ!シュナイツァーのそばにいないと思ったら。ここにいたんですね」
「はい。あの場に神が二人もいて力の呼応がしたら異常事態ですから。ラングはパーティを楽しみにしてましたからね。その様子だと、どうも仲良くとはいかなかったようですね」
「ラング…さん?」
「言葉の神です。もうご存知でしょう?」
そうか、パルパル様はルーベルンの事を言いたくても言えないという感じだったわ。
神同士だし、知っていて当然よね。
「そういうお名前なんですね。ええ。私に必要だった婚約破棄をしてきました」
「まあ、それは大変でしたね」
「いえ別に。やっと開放されました!本来なら処刑をされるまでがシナリオなんですけど、もう女神が見てないし成績が分からないなら良いんです。来世砂でもルーベルンがついててくれるって言うし…」
私がちょっと照れながらそう言うと、ルーベルンがくすっと笑う。
「美月さん、パルパル様は女神より上の神様です。砂以外になんていくらでも可能です」
「はい。来世は砂なんてさせませんよ」
「わ、そうなんだ!やったー」
「僕との契約もしてくれますか」
「あ、えっと。契約方法次第かな…」
「…と、言いたい所ですが。美月さん、ルーベルン。まだ気がかりな事があるんです」
私がルーベルンに迫られてキスとかじゃないよね?と勝手にきゅんきゅんしてると、パルパル様がちょこんと可愛らしくお座りして私達を見上げる。
「ラングは力が衰えたとはいえ、私より上の神です。彼が本気を出して妨害して来たら来世にどう響くか分かりません」
こんな所にも上下関係が。
口調的にもあっちがパルパル様より上とかは全く思えないんですけど〜。チャラ男だったわよ、あれは完璧。
そういう人の方が出世するのは何処も同じなのかしら…
「そして美月さん、あなたの身体には本当に小さくですが追跡魔法が入ってます」
「え?どこ?どうやって…?」
私が身体を焦って見回すと、「身体の中ですから」とだけパルパル様は言ってルーベルンを見た。
「ルーベルン。貴方はどうやらラングを敵に回してしまったようね。二つの意味で。ラングは論争や勝負が大好きだと貴方も聞いた事がある筈よ。だから享楽の神とも仲良しだと…」
「覚悟の上です。仕事だけする永遠の毎日に心がとうに滅んでいました。僕は消えるなら心動かされた人の為に動いて消えてしまいたいです。見守ってきた美月さん、今世ではハリエッタの人生を幸せにしたいと」
「ルーベルンったら…!」
私がきゃーっと赤くなっていると、パルパル様は「お二人がそれで良いなら、何も言いませんが」とだけ言った。
「そういう事ならば追跡魔法の解除を早くした方が良いでしょう。中へ」
「は、はい。でもこんな魔法一体いつの間にかけられたのかしら?ルーベルン気付かなかったの?」
「僕とパルパル様の魔力は月とスライム位の差があるんです。申し訳ありません」
「え、そうなんだ。別に謝らなくても良いのよ…ごめん」
なんか意識しちゃう。
シュナイツァーに対するドキッと類が違うわ。
だってだって。
私ルーベルンの前でオムツだって変えられてるし、幼児の頃はお風呂だって着替えだって慣れて来た頃にあんまり気にしないで…ルーベルンはずっと見ないようにしてくれていたのも思い返したら女性扱いしてくれてて…、あわわわ。
「あわわわ」
「どうしました、家にびっくりしましたか。大丈夫です、魔法で少しいじっただけですから」
「あ、うん…」
パルパル様とルーベルンの魔法なんだろう、外観は物置みたいなだったツリーハウスの中はお屋敷の居間って感じで絶対木の上じゃない!って床面積と立派な家具の積載量だった。
もー本当に神様の魔法って何でもありね。私の多少使える魔法なんて大した事無い。
でもこれ癖になる何でもアリ感だわ、ふふ。
「お座りください。お茶をお淹れします」
「ありがとう、ルーベルン」
私が婚約披露用ドレスのまま座ると、彼はじっとその姿を見て「…綺麗です」と少し伏し目がちに言ってくる。
ひゃああっ…照れる…
暖かいハーブティーを受け取ると、私はひとくち飲んでふうっと息をついた。
「ありがとう…」
「美月さん、いえハリエッタ…僕はずっと気になっていたのですが、マリアさんはあの会場にいましたよね。どうして加勢してくれなかったのでしょう」
「ん〜。確かにそうだったわね…入りにくかったとか?私だけでいけそうだって思ったんじゃないかしら。あの喧嘩中に入れるのは無神経なキャロレンくらいでしょ。助かったわよね、あの展開は」
「そうですね。じゃあ、どうして後半マリアさんは会場から出ていったのか」
「あら、出て行ったの?」
「はい。キャロレン嬢が入ってくる少し前に」
「じゃあマリアがキャロレンを呼んだのよ!きっとそう!あの子ならそうしてくれそう」
「……そこまでしてくれるでしょうか?」
「友達だもん」
ルーベルンは釈然としないようだけど、私は「いつかマリアにお礼をしなくちゃ」と考えながら機嫌良くお茶を飲んだ。
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