13.これで良いんだと言い聞かせるの
それからしばらくの間、不機嫌なハリエッタを演じ続けるもシュナイツァーには効果無し。
家族も体調が悪いんだろうと甘々。
皆ハリエッタを愛し過ぎじゃない?もっと厳しくしなさいよっ!
ほとほと嫌になった私は、ルーベルンから殺されても仕方ないくらいの悪役令嬢とは何たるか。それをもう一度叩き込んでもらい、
「そうよ、取り巻きがいないじゃない」
と今更に気付く。
「そうよそうよ」
「この人の言う通りですわよ」
みたいに私を意地悪の泥沼に引きずりこんでくれる仲間が欲しいわ。あわよくば私を陥れてくれるような仲間だったら、もっと良いわね。
こんな探し人をするなんて人生分からないものね。
色々話を聞いて回り、私は思い切ってナンバーワンに性格が悪そうな子爵家の令嬢グループと仲良くなることにした。
我が家のパーティには決して呼ばれない性格が悪い事で有名なキャンベング家。
そこの長女であるマリア嬢に私はわざわざ手土産を持って近付いた。屋敷も心無しかどんよりした灰色の壁でツタが絡んでるわ。
これは期待できそう。
そうして私はキャンベング家の扉を叩いた。
「はじめまして、マリア様。わたくしあなたとお友達になりたくてお伺いしましたの」
彼女の両親には接待的に歓迎してもらい、不思議そうなマリア嬢と早速お茶会の約束を取り付けた。
口元がへの字で吊り目のキツそうな性格のマリアは前世大の苦手だったお局様と似ていて、私は当たりだととても嬉しくなった。
ハリエッタとは同い年なのに色々知ってそうだし、この子はきっと私の負の力になってくれるわ。
二人きりにしてもらうと、マリアはすぐに歪んだ唇で言ってくる。
「グレース家のお忙しい御令嬢が落ちぶれた子爵家にわざわざ面識も無いのに来るなんて、おかしいですわ。あなた何を企んでらっしゃるの。この家を潰しにでもいらしたの?」
「落ちぶれてらっしゃるの?そうは見えませんけど…」
「自分が恵まれてると自慢しに来たなら、帰ってくださいません?」
「まさか!わたくしはわたくしの知らない事を知ってるマリア様にお会いして沢山お話を聞いて、お友達になりたい。そう思って来ただけですの」
「わたくし、あなたみたいなタイプは嫌いですわ」
「そういう所が良いんですの。全然違うから仲良くなりたいんですのよっ」
キャロレンの押し攻撃を真似して、まんざらでもないマリア嬢を丸め込む。
朱に交われば赤くなる。
悪役令嬢に交われば悪役令嬢になるだろうという理屈ね。
これからよろしくね、マリア。
それから一年の間、私はマリアとがっつり仲良くした。
マリアとその友達数名を招いて噂話を聞くお茶会を頻繁に開くと、すごく勉強になる。全部こちらの憶測で悪くとり、周りを押しのければいいのね。でも人は見て行うこと。素晴らしいわ。
ルーベルンは「僕の机上の理論とは違って生々しいですね」と、苦笑いしていた。
どんなに博識でも生身で実経験した人には敵わないらしい。
両親もエメリスお兄様も私がその一員になった事を分かりやすく嫌がっていた。
「ハリエッタ。お付き合いする相手は選ばないといけないよ」
私でもそう言うだろう。
だけどこれでいいの、シュナイツァーも離れたし。
シュナイツァーとキャロレンは私がマリア達とお茶会を開くと、すぐにそそくさと二人で別室に移動してくれるようになった。
やっぱり負の集団は強いわね。
♢♢♢
家族からも避けられ、キャロレンとシュナイツァーが二人で中庭を歩き始めたのを見ると、
やっぱり少しだけ寂しくなってくる。
グロリア家に呼ばれる事も無くなり、お母様は私を大人のお茶会に誘わなくなった。王家から連絡なんてもちろん無い。
それだけ、キャンベング家の評判が悪いという事なんだろう。
代わりにマリアのキャンベング家と懇意になり、裏金や暗殺を生業としているらしい怪しげな美男美女と誕生日パーティで知り合いになっていった。
これで毒殺フラグも立てやすいわね。
全部うまくいってる!
あとは何かとどめで私とシュナイツァーの冷め切った関係にヒビを入れるのよ。
チャンスを待つの。
そう自分に言い聞かせて過ごしていた16歳の誕生日。
シュナイツァーの誕生日と私の正式な結婚を発表するパーティが決まったとお父様からお話が来た。しかも王族の大きなパーティ会場を借りるんですって。
遂に最高のチャンス到来。
それまで準備して、皆の目の前で婚約破棄してもらわなきゃ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます