第33話 新旧対決
私が悠貴と美月さんの為に手を回している間、ちょっとした変化が起きた。
悠貴の周りに眼鏡を掛けた三編みの知らない女がウロチョロするようになっていた。
本当は、私の用意した相手の方がコントロールしやすくて助かるのだけれど、別に誰と付き合い始めようが私と悠貴の関係が変わるわけではないので問題ない。
ただその女がたまに見せる上から目線に少し思う事があるくらいだ。
あと、合わせたかのように私に声を掛けたり、言い寄ったりしてくる男が増えた。
正直、学校のクラスメイトも含めて悠貴以外の男は気持ち悪いので近づいてほしくないのだが、余りに頻度が高く不審に思った私は、チョロそうな男と親しくなるふりをして探ってみた。
どうやら悠貴の彼女面している小鷹真純という女が仕組んだことのようだった。
理由として考えられるのは悠貴と私が復縁することを恐れ、私を他の男とくっつかせる事で安心したかったのかもしれない。
しかしその行動は、逆に考えると悠貴を信じていない事になる。そして信用性という意味では彼女自身も同様で、いつ悠貴を裏切るか分からない。そうあんなに愛していた悠貴を裏切った私のように。
たから、しっかりと管理しないと、もしあの女が悠貴を傷つけようとするなら事前に対処しないといけない。
それと、もうひとつの計画。
より完璧に悠貴を幸せに護ってゆくため、美月さんとは早くわだかまりを解消したい。
ただ悠貴を失う恐怖を知らない美月さんは、甘すぎて私の考えについていけないだろう。
だから早く美月さんにも私と同等の危機感を持って欲しい、そのために有名大学に通う従兄弟のカズ兄にあることをお願いしているのだけれど、今のところ関係が進展したとの報告が無い。
と、そう思っていた矢先にそのカズ兄からメッセージが届いた。
『今度グループでだが食事に行くことになった。その時に落としてみせるよ』
すこし焦り気味な従兄弟が気になったので、私なりのアドバイスを送る。
『美月さんは簡単に堕ちる人じゃないから、もっと慎重に信頼を積み重ねて行く方が懸命だよ』
もともと美人で頭も良い美月さんは、男に言い寄られることが多かったけど、全てを袖にしてきた。
悠貴の事もあるのだろうけど、下心見え見えの男にはどんなイケメンだろうが全く興味を示さない。
そんな美月さんが喰い付いてくるだろう秘策を私は考えておいた。カズ兄にはその事を伝えてはいるが、焦ってタイミングを間違えてしまうと頭の良い美月さんには気づかれてしまう。
まずはゆっくりとでいい少しづつ美月さんの信頼を得られれば最悪その時点で私の作戦は成功だ。
念の為、再度カズ兄には釘を刺すメッセージを送っておき、美月さんのことは任せることにした。
私はそのままスマホをしまうと約束していた相手を待った。
三十分位したところで待ち合わせ相手が現れた。
「お待たせしました凛堂先輩」
にっこりと笑い私の真向かいに座る小鷹真純。
「いいよ、私からお願いしたことだし、メニューも好きな物を選んで頼んでいいよ、小鷹さん」
「そうですか、それじゃあ遠慮なく」
そう言うと小鷹さんは店員を呼んで、パスタとドリアをメインにサラダとポテトを副菜として頼んだ。よく食べる子らしい。
「ドリンクバーは良いの?」
「はい、ソフトドリンクの類はあまり好きではないので……それで今日は何のようなのですか元カノさん」
朗らかな笑顔の奥、あきらかに侮蔑した視線で私を見る彼女。もしかしたら悠貴から別れた理由を聞いているのかもしれない。もしそうなら、確かに彼女からすれば私は汚らわしい女だ。
「ひとつ言っておきたいことがあってさ。あのね、私は悠貴と寄りを戻す気は無いから安心して良いよ」
「…………? 意味が分かりませんけど」
「本当に? あなただよね、私に男をけしかけていたのって」
小鷹さんは一瞬だけ顔を横にそむけ舌打ちするとまた笑顔に戻ると私に尋ねてきた。
「それはどなたから聞いたんですか?」
「……逆に聞きくけど、あなたは顔だけのチャラい男なんかを信用するの?」
「そうですね、凛堂先輩の言うとおりです。理性より己の欲望をする人は直ぐに裏切りますからね、どこかの誰かさんみたいに、フッフ」
小鷹さんは侮蔑にした表情で私を見る。
「そうだよね、人は簡単に裏切る。だからさ、あなたも悠貴を裏切ったら許さないから」
小鷹さんは自分が悠貴を裏切るなんて、これっぽっちも考えていないのだろう今は。
私だってそうだった。でも私は悠貴を裏切った。自分が満たされる事を優先した結果だ。もし、過去に戻れるならあの時の自分をどんな手を使ってでも殺してやるのに。
「はぁあ、アンタがそれを言うんですか、悠貴先輩を裏切ったクソビッチのアンタが……ほんと頭大丈夫ですか?」
小鷹さんはわかり易いくらい怒りに満ちた目で睨んでくる。
「だからこそだよ、あなたの言うとおり、人って貪欲だからさ今は良くても、それに満足しきれなくなるときが来るわ、きっとアナタにもね」
「経験者は語るですか? 呆れますね本当に。でも私と先輩は大丈夫ですよ、だって……って、これは元カノのあなたには関係ない話でした」
小鷹さんは含みのある言い方で勝ち誇った表情を見せる。
きっと彼女は女として私に勝った気で居るのだろう。実に下らない優越感だ。でも、それも仕方がないことだ。私が既に曖昧な男女の関係なんて求めることのない遥か高みに辿り着いているなんて知らないのだから。
そう、私は悠貴のためなになることなら何だってして見せる。それこそ、悠貴のことなんて何も理解してないであろう、この小鷹真純とかいう女が少しでも悠貴を害するようなことがあれば………フッフッフッ……どう処理しようかな。
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