第3話 強制入院の陰謀 言語サヴァンの語り手の登場
それゆえ私のお二人––––特に横川先生、長年の私の主治医であるあなたへの気持ちは複雑 です。感謝と批判の入り混じった両義的な矛盾が私の中にはある。確かに私は勝手な断薬 ––––あなたとあなたが属する組織、そして精神医学そのものへの裏切り––––によって、分裂症から回復しました。そしてそれは私と私が愛する人々に悲劇と苦しみをもたらしました。今あなたの後輩であり部下であった美谷川真由美医師が––––彼女はあなたを尊敬しています!——恐ろしい目にあっています。この問題の最終的解決に利用されています。私の最愛の人であり、学問という人生の目標を与えることにより、結果として私を精神の闇から救った宮河彰子(あきこ)女史が利用され貶められたように。
今日は横川先生、あなたの責任についても触れなければなりません。最終的に私を例外的に閉鎖病連からご自身の責任で持って解放したとはいえ、まだ十分にはなされていませ ん。それゆえ美谷川真由美医師が極めて危険な状況に置かれています。私自身と、私が愛しまた私を愛してくれた人たちにも––––多くは非力な女性です。––––平凡な人生では起こりえないような災難が、邪悪な謀略が降りかかってきました。あなたはまだ自分がどれほどの失敗をしか、そして精神科医として患者に対して決してやってはいけない謀略に–––– cospiracyまさに「陰謀」そのもの––––に手を貸してしまったか理解できていない。あな たは私の文章を通して、現実の地獄を追体験するでしょう。社会から庇護の対象である精神障害者である眼前の私と、罪に塗れた経験を知らない非支配者––––いまだ終わることのない地獄巡りの囚われの身にある者からすれば傍観者でしかないけれど!
大丈夫ですか?覚悟は決まりましたか?ねえ、私の主治医横川新(あらた)先生––––かつての、そして 再び––––今度は現実の危機と秘密を抱える同じ監獄の囚人として!しかし、あなたが読まれ ている時点では、私の仕事はすでに終わっているのですよ。私の仕事はあなたが読んでいるこの文章を書くだけです––––あなたの失敗の最終的解決のために!今回の一番の責任者、 私の全ての文章を盗み読みし、分析にかけ、終わりのない忌々しい心理戦をめぐらしてきた私のかつての––––信頼回復は私のこの文章にかかっています––––尊敬の対象である友人であり、今回の謀略の中心人物に、そう約束していただいています。万が一私が失敗し、 あなたを説得できなければ、私たちの可愛らしい美谷川お嬢さんは、二度と医療の世界に 戻ることはなく、彼女と私も含めた全ての被害者は、永遠に関係を切り離され、秘密を抱えたまま、孤独な余生を送ることになるでしょう。そしてその時は私はもうあなたの前に姿を現す事はありません。いや、あなただけではなく美谷川先生からも、精神医学そのものから、永遠に別れを告げるでしょう。さようなら、デパス、リスパダール 、ゼプリオン。私はもうあなたたちの力を借りずに狂気との戦いに勝利してみせるよ。さようなら、 美谷川真由美先生、私の擬似恋愛の素敵なお嬢さん、怒りと憎しみは全てあなたの尊敬する横川医師に向けなさい。
さあ、始めようか。conspiracyの被害の中心人物であり、唯一語り部としての能力を備えた人間––––分裂症から生還し、言語を思いのままに操れるようになった私から、それぞれの立場と葛藤を想像しながら、全ての原因を作り出した、最も責任を負うべきである赤星病院精神科部長横川新先生、あなたに向けて語るとしよう!
まず私から、主治医のあなたへの裏切り者、薬物療法中心の精神医学への反逆者、バッカスとディオニュアスの神から性の祝福を受けた、ある女性への恋の殉教者として。
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