木々の影
それは三月の終わりのことでした
私は薄桃色の木々の影に佇み、誰かを待っているようでした
日差しはまるで重みを持ったかのように暖かく
その重みに耐えかねるように、風も吹かないのに花弁が零れ、
私の肩に一枚二枚と落ちていきます
私はただ薄桃色の影の中で誰かを待ち
霞にけぶるスモークブルーの空から、時折光の粒が現れ、瞬いて消えていくのは、
あれは一体誰の待ち人でしょうか
背中を預ける太い幹のざらりとした感触は、まるでゆっくりと脈動しているようで
一枚
二枚と
花弁が目の前を落ちていきます
私は名も知らぬ、顔も知らぬ、声も知らぬ誰かを待っているようで
待ってはおらぬようで
その薄桃色の影の中に立ち尽くし
ただ光の粒が弾けて消えるのを、穏やかな心持ちで眺めているのでした
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