老い

 血塗れで僕は生まれ

 あまりの寒さに僕は泣き

 あの、暖かな海のなかに帰りたくて

 荒々しい光が僕の目を焼き

 あの、暖かな闇のなかに帰りたくて

 僕は泣き

 僕を囲む巨大なものたちが、わけのわからぬ音を発し

 僕の腹の緒を切った


 ああ

 その瞬間

 僕は自分が命であることを知った

 この醜く巨大なものたちが、僕の成れの果てなのだと知った

 僕を抱える、ぐったりとした生き物が僕を生んだのだと知った

 その口元が弱々しく吊り上がる、その意味も、僕にはまだ分からないけれど


 僕はきっと、枝から落ちた果実

 今この瞬間から腐りゆく果実

 やがて地面に落ちて弾けて散るまで


 僕は今から、老いていく

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