踏み出す足にさえ韻律があって

 流れる涙にも幽かな熱がある

 藍と茜のせめぎ合う空模様には、寝床へ向かう烏の羽音が吸い込まれ

 遠景、立ち枯れる城砦のシルエットが、僅かに揺れた気がした

 虚空に流れゆく花の香も

 口の中に湧く鉄の味の唾も

 全てを明日には連れてゆけぬから


「今日のところはお帰りなさい」


 私の頬に、シルフが接吻くちづけをした

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