食べ物

 ほかほかと陽気な気分に誘われて

 カステラ色のカーディガンを羽織った


 天井から釣り下がる蜘蛛の糸を指で巻いて、綿あめにして手に持つと

 瑠璃色のピンキーリングがラムネになって、ぴろぴろと小鳥の声


 スフレのようなサンダルをつっかけて外に出れば

 窓に反射する日の光が、ぱらぱらと舞って金平糖になった


 通りの角の郵便ポストは梅ジャムの味がして

 のろのろと走る三輪車に触れると、チョコレイトが指に絡んだ


 足跡には色とりどりのゼリーが溜まっていき

 猫の尻尾はキャンディーケインとなって私の手を離れていく


 四方から薫る甘い匂いで

 私の鼻はすっかり幸せに溺れてしまい


 どこまでも沈んでいくスポンジの路に腰まで飲まれ

 伸ばした右手がトフィーになって砕けるまで


 私の瞳は、丘の上のケーキに乗った苺を目指していたのでした。

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