人妻、大猿に犯される(巻一「猿人の妻を嫁する事 さるひとのつまをかすること」)

 常陸国高野村のある百姓は、里から十町ばかり離れた山際に建てた家に住んでいた。

 秋の時分、夫も下人も野へ出て、女房が一人家に居たところに、大きな猿が這入ってきた。

 そして、女房を抱き倒すと、人と性交するかのように上にのしかかってきた。

 女房は声を上げて人呼んだが、近くに人家はなく、出合う者はいない。

 逃れようとしても、猿はかき抱き、しがみ付いてくる。

 ついには赤く大きな物を挿入してきた。

 猿は限りなき歓喜に吠えた。

 女は心にもないことに悲しみ、ただただ泣いていた。


 そこへちょうど毛見けみの代官が百姓をあまた連れてやって来たが、この有様を見て驚き、大勢で取り囲んで猿を叩き殺した。

 猿の身長は六尺ばかりの古猿であった。

 殿にも申し上げたので、これをご覧になったという。

 寛文年中(1661~1672)のことだそうだ。

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